【完結】婚約破棄された悪役令嬢は、一途な愛を注ぎこまれています。
「一途、か。確かにそうかもしれないな」
「ええ、そうですわね。私たちは『運命』を信じているから」

 すっとクッキーを摘まんで、隣にいる公爵に「あーん」と勧める公爵夫人。

 ぱくっと口にする公爵。

 ら、ラブラブだぁ……! どこか呆れたように自身の両親を眺めるフィリベルトさま。もしかして、これが彼らの『普通』なのかしら?

 前世は日本人だったし、恋人もいない人生だったから、こういうラブラブイチャイチャは創作の中でしか見たことがないのよね。

 そりゃあ乙女ゲームの中では、攻略対象と主人公をイチャイチャさせたけど。

 ちなみに私は主人公(イコール)自分ではなく、主人公は主人公と考えるタイプ。なので、無個性ではなくしっかりとキャラ付けされている主人公が好きだった。

 その点、この乙女ゲームの主人公、フローラはしっかりと主人公らしいキャラ付けがされていたから、大好きだったんだけどなぁ……。ゲームの彼女と、この世界の彼女はまったく別の人だ。

 ゲームのフローラは、明るくて優しくて、どんな人にも手を差し伸べる女性だった。そう、どんな人にも……それがたとえ悪い人でも。

 乙女ゲームだからね。そういう悪い人たちはフローラの優しさに触れて改心するのよね。

 とはいえ、この世界で彼女がどういう行動を起こしていたのか、私にはさっぱりわからないわ。
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