【完結】婚約破棄された悪役令嬢は、一途な愛を注ぎこまれています。

「……リディア嬢?」
「あ、いえ……その、とても仲が良いのですね」

 おっといけない、考えこんじゃった。

 フィリベルトさまの声に、慌てて彼に視線を移して、眉を下げて微笑む。

「ええ、まぁ。息子と息子の婚約者の前でもこの調子ですからね……」

 呆れたような声に、くすくすと笑ってしまった。やっぱり、彼にとってこの光景は『普通』のことなのね。

「ところで、『運命』とは?」

 公爵夫人の言葉が気になって(たず)ねると、彼女はぱちくりと目を(またた)かせて、「うふふ」と頬に手を添えて可愛らしい笑い声を上げた。

「私たちはね、竜の血を受け継いでいると伝えられているの」
「竜の血?」
「ええ。ユミルトゥスを創世したのは竜だと伝えられているのよ」

 竜が、国を作った? 目を丸くして公爵夫人を見つめると、彼女はちらりと公爵を見上げる。

 公爵は彼女から言葉を引き継いだかのように口を開く。

「――竜の涙を、知っているかい?」
「は、はい。万能薬と呼ばれていますよね」
「そうだ。その竜の涙は、王家や公爵家に受け継がれている」

 竜の涙が、受け継がれている? 万能薬で疫病に苦しんでいる人を治したのでは……? いや、これはおとぎ話なの?

 ちょっと頭が混乱してきたわ。
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