【完結】婚約破棄された悪役令嬢は、一途な愛を注ぎこまれています。

ご挨拶 3話

「竜の涙は、存在しているのですね」
「ああ。おそらくリディア嬢が知っているのは『守護竜が流した涙』だろう」

 こくりとうなずく。もしかして、他にも伝承があるの? なんだか胸がドキドキと高鳴ってきたわ。私、この話を聞いてもいいのかしらという疑問と、他の伝承はどんなものなのかという好奇心が混ざり合って、複雑な気持ち。

「竜の涙はね、結婚したあとに公爵家の血筋が流す涙のことなんだ」
「……え?」
「結婚したあと、配偶者と一緒に過ごす時間が幸せ過ぎて、涙が出るんだ。ただ、涙を流さない人もいる。そのときは、いずれ離婚や死別することが多いね」

 ……えっと、結婚したあとにフィリベルトさまが涙を流さなかったら、それは『運命』ではないということ? というか、幸せ過ぎて涙を流すってどういうこと? いや、うれし泣きという言葉もあるくらいだし、そこは気にしなくてもいいのかしら?

「ははは、いきなりそんなことを言われても困るだろうけどね。実際私も泣いてしまったよ。妻が私の手に届くところにいてくれるのが、嬉しくてね」
「あのときはびっくりしましたわ。いきなりぽろぽろ涙を流すのですから」

 頬から口元に手を移動して、目元を細める公爵夫人。

 公爵が涙を流すところが、全然想像できないわ。
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