【完結】婚約破棄された悪役令嬢は、一途な愛を注ぎこまれています。
「父上、たまに泣いてますよね、今でも」
「あら、知っていたの?」
「そりゃあね」

 い、今でも……!? でも、それをどうやって万能薬に……? だめだわ、頭の中が混乱していて、想像できない!

 でも、こんなにダンディな公爵が涙を流すくらい幸せなんて、素敵なことだと思う。

「公爵夫妻は、とても幸せな結婚生活を過ごしているのですね」
「ええ、だって私を愛してくれる方ですもの。愛されるとね、愛したくなっちゃうのよ」

 きゃっ、と恥ずかしそうに両手で顔を覆う公爵夫人に、なんだか私まで恥ずかしくなってしまったわ。

「そういうわけで、我が国の高位貴族たちの愛は重い、とはよく言われていたが……一途という言葉はいいね。私はこれからも、妻一筋だから」

 きっぱりと言い切った公爵に、思わず拍手をしそうになった。そっと公爵夫人の肩を抱いて、自分のほうに引き寄せているのも自然だわ。

 すごい。本当にすごい。

「……あの、変なことを、聞いてもよろしいでしょうか?」
「なんだい?」
「それは、魅了の魔法を使われても、でしょうか?」

 フローラのことを思い浮かべながら言葉を紡ぐと、公爵は「ふむ」と小さくつぶやいた。

「魅了の魔法を受けたことがないので、これはただの可能性の話になる」
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