【完結】婚約破棄された悪役令嬢は、一途な愛を注ぎこまれています。
「ふたりとも、具合はもう大丈夫?」
「はい、ゆっくり休めたおかげで、なんとか」
「でも、もう二度と竜には乗りたくないです……」

 ふたりは哀愁漂う表情を浮かべながら、それぞれ言葉を紡ぐ。

 その内容に私は小さく口角を上げてしまった。ジェットコースターに乗る経験なんてないものね。

 ……でも、この世界のどこかにあってもおかしくない……気はする。

 なんせこの乙女ゲーム、いろんなものがあったもの。水族館がデートスポットにあるくらいだから、遊園地があってもおかしくないと思うのよね。

 ただ、私たちが暮らしていた国にはなかったけれど……その代わり、デートスポットはそこそこあった。……乙女ゲームの世界だから、そりゃそうだろう。

「ここから寮までは馬車でしょうか?」
「おそらくね。今日はこのまま公爵家にお世話になるけれど……寮に向かう前に、ちょっと外を見てみたいわね」
「確かに。私たち、まったく知らない国にきていますからね。どんな人たちが暮らしているのか、興味があります」

 キリッと真剣な表情を浮かべるローレン。

 チェルシーは彼女の脇腹を肘で突きながら、ニヤニヤとした笑みを浮かべて明るい声を発する。

「そんなこと言って、本屋さんが気になるだけでしょう?」
「チェルシー!」

 図星だったのか、ローレンが顔を赤くして彼女の名を呼ぶ。……本好きのローレンだ。本屋を巡ることを楽しみにしていても、変ではないわね。

「なら、明日にでもフィリベルトさまに頼んで、街を案内してもらいましょう。私もどんな人たちがいるのか気になるし」

 空から見た限り、とても整った街のようだし。そんな街に住んでいる人たちがどんなふうに生活しているのか、この目で見てみたい。
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