【完結】婚約破棄された悪役令嬢は、一途な愛を注ぎこまれています。
 時折、デートに誘ってくれたので、いろいろなところに足を運んだわ。そうして彼と過ごしているうちに、惹かれていることに気付いた。でも、私は婚約を破棄された令嬢。

 本当に、彼と結ばれてもいいのだろうかと悩んだこともあった。

 それでも――エステルさまの話や、夢に出てきたリディアと話したことで、心が決まったの。

 彼を信じたい。愛されたい。愛したい――と。

 私は、この世界で生きていく。生きていくからこそ――全力で、恋愛をしたいと思ったのよ。

 前世の私には恋人はいなかったから、恋愛がどんなものなか体験することはなかった。

 勉強や仕事に追われる人生だったし、恋愛よりもそっちのほうが楽しかったのも否めない。それに、恋愛成分は乙女ゲームで摂取できたから、現実の男性に興味がわかなかった。今思えばなかなかの理想主義だったのかもしれない。

 だからこそ、この世界ではしっかりと恋愛をしたい。愛し愛され、幸せな家庭を築いていく、そんな『普通の恋愛』を望んだ私に、彼はしっかりと向き合ってくれた。

 そのことが、とても嬉しかったのよ。

「どうか私に、貴方(あなた)を愛させてください」
「――もちろんです。リディア嬢、オレの愛に、溺れてください」

 ――なんて、甘美な言葉なのかしら。
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