【完結】婚約破棄された悪役令嬢は、一途な愛を注ぎこまれています。

空の散歩

 満天の星空の下で、ファーストキス、なんて……ロマンチックもいいところよね。まるで私自身が乙女ゲームの主人公になったみたい。

 ……いいえ、この世界では、誰でも主人公なのよね。

 悪役令嬢のリディアとしての人生は、あの日に終わりを迎えて、今の私の人生に変わった。

 ここから先は、未知の世界。

 そもそも、アレクシス殿下のルートを私がやっていなかったことも含めて、ある意味運命だったのかもしれないわ。

 アレクシス殿下はメインだと思っていたから、後回しにしていたのよね。他の攻略キャラたちとのヒロインの恋愛を楽しんで、さぁ最後のメインを楽しもうってときに、命を落とした。

「リディア嬢?」
「フィリベルトさま、どうか私のことは、『リディア』とお呼びください」

 目を(またた)かせる彼に、にっこりと微笑んでみせる。この恋がどんなふうに形を変えていくのかわからないけれど――それはきっと、良い方向に私を変えてくれると考えているの。

「それは……敬称はいらない、と?」
「ええ。年齢も同じですし、私と貴方(あなた)は婚約者ですもの。口調も、フィリベルトさまの楽にしていただいて構いませんわ」

 すらすらと言葉が出てくる。以前から敬語と砕けた口調が混じっていたし、きっと砕けた口調のほうが彼の素なのだと思う。

 それなら、私の前では素になってほしい。

「……貴女(あなた)が、それを許してくれるなら、喜んで」
「ふふ、そうしてくださいな」
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