【完結】婚約破棄された悪役令嬢は、一途な愛を注ぎこまれています。
 口元に手を添えてくすくすと笑うと、フィリベルトさまはずるずるとその場に座り込んでしまった。そして、星空を見上げると「あ」と言葉をこぼす。

「え?」
「流星群。……そうか、今日だったか」

 流星群? と空に視線を向けると――流れ星が次々と視界に入り、言葉を()んだ。「……きれい」

 こんなに、きれいな星空をフィリベルトさまと一緒に見られるなんて、やっぱり私って幸せ者ね。

「この時期だとは聞いていたけれど、やっぱりこうして見ると感慨深いな」
「フィリベルトさまは、以前にも見たことが?」
「留学する前にね」

 すくっと立ち上がり、フィリベルトさまは私に手を差し伸べる。

「どうせなら特等席で見ないかい?」
「特等席?」
「そう、ここから呼べるんだ」

 彼は親指と人差し指で輪を作り、唇に(くわ)えてピュィ、と指笛を奏でる。なにをしているのだろう? と不思議そうに目を丸くしていると、にゅっとなにかが顔を見せた。

「ムーン!?」

 さっきの指笛は、ムーンを呼んだのね。あの指笛が聞こえるくらい、ドラゴンの耳はいいということかしら?

「ムーンに乗って空の散歩をしよう、リディア」

 紳士的に接してくれるフィリベルトさまも素敵だけど、こうして楽しそうに笑う彼も、また魅力的だと感じて、頬に熱が集まるのを感じる。

 ムーンに乗り込もうとしている彼の手を取って、私は空の散歩を楽しむことに決めた。
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