冷徹狼陛下の子を授かりました!

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 ウルフリア王国大広間ーー

「エドワード国王陛下とマリア王妃の結婚がここに成立いたしました」

 ――パチパチパチ

 盛大な拍手に包まれているものの、会場の雰囲気は冷たく祝いの場とは思えない。それもそのはず、新郎であるエドワードは無表情で冷たく何を考えているのか、誰にもわからなかった。そして横に立っているマリアは怯えた様子で視線は下へと向けられて、今、この瞬間に結婚式を挙げた幸せな新婦には見えない。

 まるで死刑を宣告された罪人のような――

 そんな言葉が浮かぶほど怯えた表情だ。しかも、新婦の家族の姿はない……

 招待客達は反応に困りながらも、普段は閉ざされている王城に興味を示しキョロキョロしている。想像していた以上に冷たい雰囲気を醸しだす城内だが、一応結婚式を祝うための飾りつけはされていた。これがなければ、もっと寒々しく感じるに違いない。

 ウルフリア王国は、代々狼族の血を引く特殊な家系で世間から一目置かれている。いや、恐れられていた。

 帝国の北部に位置するこの王国は、閉鎖的なだけでなく皇帝からも厄介だと思われている。ただ、この地を守ることができるのも彼らしかいない訳で……

 皇帝も無下には出来ないのだ。

 彼らがいなければ、帝国は北部から敵の侵入を許していたに違いない。敵国からも恐れられているのが、狼族の血でありウルフリア王国なのだ。

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