冷徹狼陛下の子を授かりました!
 ◇◇◇

 ブルネリア伯爵家――

 マリアの母カミラも伯爵家の娘で、誰からも慕われる美しい人だった。マリアの父であるブルネリア伯爵家のメイソンがカミラに一目惚れをして、あらゆる手を尽くし縁談を取りつけたところから不幸が始まる。

 ブルネリア伯爵家は世間からあまり評判が良くはなかったが、代々皇帝陛下に上手く取り入りそれなりの力を持っていたのだ。カミラは、メイソンに目を付けられたことでその犠牲になったと言っても過言ではない。

 ところがいざ結婚生活が始まると、カミラの聡明さを前にメイソンは劣等感を感じた。自分の能力がないことは棚に上げて、カミラを疎ましく思い始める。

 実はカミラは誰にも隠していたが、カミラの家系が代々触れた相手の心の声が聞こえる能力を持っていた。そのことは、家系でずっと隠し続けられていて世間には一切知られていない。

 もちろん、メイソンの心の内は手に取るようにカミラには伝わっていた。すでにカミラはメイソンの愛人の存在も把握している。望まない結婚と裏切りに、実家へ帰ろうかと思っていた矢先、子供を妊娠していることに気づいたのだ。お腹の中の子に罪はない。
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