冷徹狼陛下の子を授かりました!
 マリアは乳母に育てられ、ブルネリア伯爵家ではミラが娘として寵愛された。父親は同じだが、虐げられた姉と溺愛される妹。

 異母姉妹の差は歴然で……
 
 マリアの味方は乳母のハンナだけ。カミラは生前、もし自分に何かあった時のためにハンナへマリアを託していた。きっと遺伝すると予想できる能力も、誰にも知られないように伝えていたのだ。

 伯爵家では、マリアの存在はないもののように扱われる。ハンナがいなければ、マリアはまともに育たなかっただろう。伯爵家の中で一番端の薄暗い部屋で、一日の大半を過ごすという冷遇ぶりだったのだ。

 ある日、皇帝からウルフリア王国への縁談を命令される。今までマリアに見向きもしなかった父が、迷いもなく伯爵家のためにマリアを差し出した。

 マリアはウルフリア王国の恐ろしさよりも、もしかしたら今の生活よりはマシなのではないかと少しの希望を持つ。この家にいても、ずっと虐げられた生活が続くだけだ。

 そして、ブルネリア伯爵家を出る時。哀しんでくれたのはハンナだけ……

 絶望と希望を胸に馬車で揺られて到着したウルフリア王国は――

 手の中のレオンの温もりを感じながら、マリアはブルネリアのことを思い返すも未練は一切なかった。

 ◇◇◇
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