冷徹狼陛下の子を授かりました!
 政略結婚で嫁いできて、そのまま突然結婚式を挙げたと思ったら相手とはまともに視線も合わず、一瞬向けられた視線はあまりにも冷たく絶望していたのだ。それがこの待遇なのだから、マリアが戸惑うのも仕方のないことだろう。
 
「何か不都合なことがございますか」
「そんな、むしろ立派過ぎて戸惑ってます」

 マテオは疑問に思った。

 マリアの様子から嘘などついているようには見えないが、伯爵令嬢の反応とも思えない。もっと煌びやかで傲慢な娘がきて、エドワードの怒りをかうことを恐れていた。

 それが実際に来た伯爵令嬢は、傲慢とは真逆の怯えた様子に感じられる。しかも、エドワードの次に気難しいレオンを一瞬にして手懐けているのだ。

「ご不満がないようで安心いたしました。さあ、部屋に入ってソファへおかけください」
「はい」

 キョロキョロとしながら部屋へと入って行くマリアを見て、マテオは笑いが漏れそうになる。

 突然、皇帝から下された命令でやって来た花嫁。ウルフリア王国では、一気に警戒モードになったのは言うまでもない。
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