冷徹狼陛下の子を授かりました!
 マリアは黙って次の言葉を待った。

「公にはされていませんが、レオン様の両親でエドワード陛下の兄夫婦、ウルフリア前国王は何者かに襲撃されて命を落としたのです」
「え……」
「でも、その事実はうやむやにされました。証拠がなくどうしようもなかったのです。悔しいですが、我々は王国を守ることが最優先で、涙を飲むことになりました。もちろん調査は続けていますし、なかったことにはさせません」

 マテオの表情は無念だと言っている。国王が狙われて亡くなったのにうやむやになるということは、それ以上の力が動いたことを意味していた。虐げられながらも伯爵家の手伝いをさせられていたマリアには、今の話だけで解決が簡単なことではないことを理解する。

 マリアは、腕の中でスヤスヤと眠るレオンを抱きしめ、この子を守りたいと強く思った。

 母の温もりを知らずに育ったマリアだからこそ、レオンの寂しさも理解できる。

 ウルフリア王国の王妃になったことよりも、レオンの継母として生きていく覚悟を決めた。
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