冷徹狼陛下の子を授かりました!
 みんなが口を揃えて手を焼いていると言っていたレオンが、こちらを見上げながら目を潤ませて聞いてくる。マリアは思わず手を口元に当てて、心臓を鷲づかみされたような感覚でレオンに魅了された。

「やっぱりダメ?」

 マリアから返事がないことに不安な表情を浮かべるレオンに、慌てて否定する。

「ダメじゃない! ママって呼んでくれるの? すっごく嬉しい!」
「ホント? ホントにホント? ホントにいいの?」

 必死なレオンにマリアの表情が綻ぶ。

「もちろん。ウルフリア王国へ来たばかりで知らないことだらけだから、色々と教えてくれると助かるわ」
「まかせて!」

 まだ母親が恋しい年頃のはずだが、年齢よりもしっかりとしている。みんなが手を焼くほどややこしいとは到底思えない。もしかしたら大人しかいない環境で、誰かに構ってほしくてわざと暴れているのかもしれないと思った。

 ウルフリア王国でこれからどうなるのか不安な中でのレオンの存在に、マリアは救われた気持ちになる。

 自分は子供が産めない身体なのだと、何年も前に母となることを諦めていた。そこへこんなサプライズが待っているとは……
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