冷徹狼陛下の子を授かりました!
 マリアの膝の上でニコニコとしているレオンの心は、邪な気持ちが一切なく澄み渡っている。レオンには申し訳ないが、心の中が読めることを伝えるわけにはいかないのだ。

 ただただ、目の前の愛しいこの子を守りたい。

 マリアが一人決意を新たにしているところへ扉のノックする音が聞こえた。

 ――コンコン

「はい」
「失礼します。本日からマリア様の担当になりましたリリアンで……」

 扉を開けて部屋の入口のところで頭を下げてあいさつしていたリリアンは、マリアの方を見て目を見開いて驚き固まる。

「リリアン? どうしたの?」

 マリアが問いかけるも一向に反応がない。

「おい」

 そこに大人の男性のような低くて威厳のある声が響き渡った。

「きゃ、きゃー」

 リリアンはわれに返って叫び声を上げると部屋から逃げ出してしまう。マリアの頭の中はハテナだらけだ。

「レオン?」
「ん?『フンッ』」

 リリアンに対する先程の低い声はレオンの声だったのだろうか? 今は可愛らしい声と表情でマリアを見ていた。一瞬の黒さを感じたが、あどけない表情を見ていると気のせいだと思える。

 結局、リリアンは何の用があったのだろうか……
< 23 / 63 >

この作品をシェア

pagetop