冷徹狼陛下の子を授かりました!

-5-

 ウルフリア王国での生活は想像以上に快適で平和だ。横暴な父、嫌味な義母や義妹がいない。そして初日に顔を合わせて以来、夫となったエドワードとも会う機会がないのだ。

 朝起きると、毎日リリアンよりも先にレオンがマリアの部屋へとやって来る。

「おはよう!」
「レオン、おはよう。今日も早いわね」
「うん! 早くママに会いたかったの」

 満面の笑顔でサラッと嬉しいセリフを言われると、キュンとして身悶えしてしまう。

『な、なんて可愛いの。幸せ過ぎて怖いくらいだわ』

 人間の姿のレオンに触れると心の声は聞こえてくる。でも、マリアの知る限りでは使用人達が怯えるような黒さは一切ない。マリアにとってレオンは純粋な子供で、警戒する要素はなかった。

 しかし、狼族の血を引くレオンは嗅覚が鋭く、聡明であり知恵も働く。使用人に対しては警戒心が強く、リリアンに至っては完全に敵視していた。それには深い訳があるが、レオンは敢えてマリアに伝えていない。何も知らないマリアをレオンなりに守ろうとしていた。
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