冷徹狼陛下の子を授かりました!
 マリアは自分が許可してしまったばかりに、レオンを哀しませてしまったと後悔した。

「すみません! 私が許可してしまいました。レオンを怒らないで下さい!」
「……はぁ……君がいいなら構わない」
「陛下! ありがとうございます。レオン、いいって!」

 無邪気なレオンと安堵するマリア。その様子を冷徹な眼差しで見ているエドワード。

 マリアはふと思った。冷徹に見えるが、実は表情ほど恐くないのではないかと……

 レオンのことを誰よりも大切にしていることは伝わってくる。

「ママ! ところで、マリアは陛下って呼ぶし、陛下は君って呼ぶの変じゃない? 二人は結婚したんでしょ?」
「……」
「……えっと……」

 マリアには何が正解なのかわからない。

「陛下はマリアって呼んで、マリアはエドワードって呼べばいいんじゃない?」
「……わかった」
「ええ⁉」

 エドワードは、思わず戸惑いの声を上げたマリアをギロッと睨む。レオンは今の会話で満足したようだ。

「ママ、お腹空いた。食べようよ」
「う、うん……」

 マリアは、驚きの展開に朝食の味が全くわからい。

 先に食事を終えたエドワードが食堂を出た瞬間――

「はぁぁぁ」

 マリアの大きな溜息が、食堂中に響いたのは言うまでもない。
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