冷徹狼陛下の子を授かりました!
 跡継ぎは必要だが、帝国を脅かす存在になられては困る。

 そのマリアには、身体的な問題があった。でも、聞かれていないものを答える必要がないとばかりに伯爵はあえて口にしない。ずる賢く、自分の娘の犠牲も厭わない。それがマリアの父であり、ブルネリア伯爵家の現当主なのだ。

 皇帝の思惑と伯爵の思惑が交差する。

 その犠牲になったのがマリアだ。
 

 ところが、ウルフリア王国には跡継ぎがすでに存在する。跡継ぎの存在は世間には知らされずに隠されていた。狼族の血は貴重で、知られてしまうと狙われるかもしれない。

 実は、エドワードには兄がいたのだ。そう、いた……

 過去形――

 数年前にウルフリア王国の国王が亡くなり、長男のハウエルがウルフリア王国を継いだ。

 幼い頃に母を亡くしていたエドワードにとっては、五歳上の兄ハウエルが親代わりとして大切な存在。まだ18歳と若いハウエルが急遽王となり、さらには当時交際をしていた女性との間に子供を授かっていた。ただ、父の急死とウルフリア王国を継いだばかりということで、世間には公表されずに城の中だけの秘密にしていたのだ。



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