冷徹狼陛下の子を授かりました!
 周囲に聞こえるような大きな声で下品に叫ぶ。

 こんなにたくさんの人達の前で、自分の元家族がエドワードに恥をかかせるなんて居たたまれない。どうしたらいいのか思案している時だった。

「どちら様でしょうか? うちの陛下と王妃に何か?」

 マテオがマリアと義母達との間に入る。

「ふんっ、そんな出来損ないが王妃? 冗談もほどほどにして」
「マリアのくせに生意気!」

 義母と義妹からは遠慮のない言葉が浴びせられた。この様子を周囲は興味津々に見ている。

「お立場を理解されていないようですが、ただの伯爵家の方々がウルフリア王国にケンカを売っているという解釈でよろしいでしょうか」
「はあ? 私はただ娘に声を掛けているだけよ。ケンカを売るなんて人聞きの悪い」

 マリアは、ウルフリア王国に迷惑を掛けないかが心配でおろおろとしてしまう。

『大丈夫だ。見てろ』

 エドワードから言葉が伝わり、マリアは冷静になった。もうブルネリア家にいた時と違い、今はたくさんの味方がいる。

「何事だ!」
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