冷徹狼陛下の子を授かりました!
 嫌味を言われた挙句、無能だと蔑ろにしてきた娘を嫁がせたことを、感謝されるなんて屈辱でしかない。

「ふんっ、偉そうに。まあ、お前らはマリアの秘密を知らないから感謝してられるんだ」

 鼻で笑った父は、侮辱したような眼差しをマリアに向けた。瞬時に父が何を言いたいか理解したマリアは、蒼白な顔をして下を向く。

 いつかは伝えなくてはならないと思っていた不妊症のこと……

 最悪の形でバラされることになりそうだ。

 ウルフリア王国での楽しい日々を思い出して、今にも涙が溢れそうになってしまう。

『大丈夫だ』

 不安なマリアに、エドワードから力強くも優しい声が心に響いた。何が大丈夫なのかはわからないが、エドワードの言葉を信じる。

「マリア様の秘密?」

 マテオが振ると、父は意気揚々とした表情になった。これで形勢逆転とでも言いたいのだろう。
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