白い結婚を言い渡されたお飾り妻ですが、ダンジョン攻略に励んでいます
この階層はBAN姉さんから鍵を受け取ることでクリアとなり、その戦利品がこの宝箱なのだ。
このボスの厄介なところは、人の悪意を敏感に感じ取りそれを跳ね返すだけでなく、悪意を向けられたと感じるとその対象者をダンジョンからも冒険者協会からもBANするというペナルティーを与えることだ。
BANとは、強制的かつ一方的な登録抹消のことを言う。
このペナルティーをくらうと、当然ながらこれまでの登録カードが使えなくなり、冒険者登録手続きやパーティー加入手続きがやり直しとなる上、一旦登録を抹消すると3日間は再登録できないという規定まであるため非常に厄介なのだ。
ロイパーティーが初めてこの地下40階に到達した時、予備知識がない状態でいきなりロイさんがボスに斬りかかり、その直後に姿を消したという。
それに驚いたエルさんが魔法によって紡いだ強力な衝撃波を叩きこもうとしてまた姿を消し、慌てたトールさんが斧を振り下ろして姿を消した。
ほかのメンバーも似たような状況で、最後に残ったひとりは扉の外から見ていただけだったにも関わらず、ボスの深紅の目を見ているだけで恐怖心が倍増していき、その場に倒れそうになったところでダンジョンからBANされて外に放り出されていたという。
そしてそこには、先に姿を消したメンバーたち全員が倒れていたらしい。
ロイさんの利き腕は肘から先が大剣を握ったままの状態で少し離れた場所に落ちており、エルさんはお腹に大きな穴が開いていて瀕死、トールさんも頭に斧が刺さっているという、何とも凄惨な状態だったようだ。
ちなみにこの街には優秀な神官が常駐している治療院があり、ダンジョンで命を落とすことは滅多にない。
処置が早ければ、ほぼ死んでいる状態だって生き返る。
ただし蘇生や大怪我の治療には相当な苦痛が伴う上に莫大なお金がかかるため、死なないに越したことはない。
しかも、発見が遅れてミイラ化、白骨化または腐乱していた場合や、魔物に食べられて消化されてしまったとか、灼熱の炎で一瞬にして灰になってしまったとか、粉々に爆散した場合は、さすがの腕利きの神官でも蘇生・再生は不可能だ。
この地下40階のボスの噂は、ロイパーティーが全滅したという衝撃的なニュースとともにダンジョンマニアの間で拡散され、その噂を聞きつけてよそのダンジョンのベテラン有名パーティーまで駆けつける事態となった。
最初に箝口令を敷いたところで無駄だったのかもしれないが、実はこれが大失敗だった。
ボスに攻撃を仕掛けたらそっくりそのまま跳ね返される、おまけに登録抹消までされるということで、このボスは誰が命名したのか「BAN姉さん」と呼ばれるようになったのだが、それだけではなかった。
このボスを攻略しなければ先には進めない。倒すべき憎らしいボス。
そんなことを心の中で思っただけでBANされることも判明したのだ。
最初にロイパーティーが全滅した時、最後のひとりが何もしていないのにBANされたのはこのためだった。
だから、姉さんがボスであることを意識してはならない。
ロイさんは冒険者協会に「仕様がおかしい! こんなの無理ゲーだろ」と猛抗議したようだが、冒険者協会がダンジョンを作っているわけではなく、ダンジョンマスターから運営委託を受けているだけであるため、攻略に関する質問や苦情を寄せられてもお答えしかねると一蹴されたんだとか。
おまけに、再登録手続きが殺到するせいで通常業務が滞るという理由で、地下40階の攻略は原則週1回までとするという規定まで設けられてしまった。
もしやBAN姉さんがダンジョンマスターなのかもしれない。
マーシェスダンジョンは地下40階が最下層なのか。
そんな憶測が流れ始めた頃、初めて攻略に成功したパーティーが出た。
BAN姉さんの攻略に成功したのは、南方から噂を聞きつけてやって来たパーティーで、地下40階までをたったの1週間で駆け抜けて到達したらしい。
成功者はパーティーのリーダー……が飼っているリスザルだった。
扉が開くと同時にリーダーの肩から飛び降りて制止も聞かずに駆けだしたリスザルが、BAN姉さんの膝に飛び乗り、何かを語り掛けるようにキキッと鳴くと、BAN姉さんは姿を消して宝箱が現れリスザルの手にはその箱を開けるための鍵が握られていたという。
このボスの厄介なところは、人の悪意を敏感に感じ取りそれを跳ね返すだけでなく、悪意を向けられたと感じるとその対象者をダンジョンからも冒険者協会からもBANするというペナルティーを与えることだ。
BANとは、強制的かつ一方的な登録抹消のことを言う。
このペナルティーをくらうと、当然ながらこれまでの登録カードが使えなくなり、冒険者登録手続きやパーティー加入手続きがやり直しとなる上、一旦登録を抹消すると3日間は再登録できないという規定まであるため非常に厄介なのだ。
ロイパーティーが初めてこの地下40階に到達した時、予備知識がない状態でいきなりロイさんがボスに斬りかかり、その直後に姿を消したという。
それに驚いたエルさんが魔法によって紡いだ強力な衝撃波を叩きこもうとしてまた姿を消し、慌てたトールさんが斧を振り下ろして姿を消した。
ほかのメンバーも似たような状況で、最後に残ったひとりは扉の外から見ていただけだったにも関わらず、ボスの深紅の目を見ているだけで恐怖心が倍増していき、その場に倒れそうになったところでダンジョンからBANされて外に放り出されていたという。
そしてそこには、先に姿を消したメンバーたち全員が倒れていたらしい。
ロイさんの利き腕は肘から先が大剣を握ったままの状態で少し離れた場所に落ちており、エルさんはお腹に大きな穴が開いていて瀕死、トールさんも頭に斧が刺さっているという、何とも凄惨な状態だったようだ。
ちなみにこの街には優秀な神官が常駐している治療院があり、ダンジョンで命を落とすことは滅多にない。
処置が早ければ、ほぼ死んでいる状態だって生き返る。
ただし蘇生や大怪我の治療には相当な苦痛が伴う上に莫大なお金がかかるため、死なないに越したことはない。
しかも、発見が遅れてミイラ化、白骨化または腐乱していた場合や、魔物に食べられて消化されてしまったとか、灼熱の炎で一瞬にして灰になってしまったとか、粉々に爆散した場合は、さすがの腕利きの神官でも蘇生・再生は不可能だ。
この地下40階のボスの噂は、ロイパーティーが全滅したという衝撃的なニュースとともにダンジョンマニアの間で拡散され、その噂を聞きつけてよそのダンジョンのベテラン有名パーティーまで駆けつける事態となった。
最初に箝口令を敷いたところで無駄だったのかもしれないが、実はこれが大失敗だった。
ボスに攻撃を仕掛けたらそっくりそのまま跳ね返される、おまけに登録抹消までされるということで、このボスは誰が命名したのか「BAN姉さん」と呼ばれるようになったのだが、それだけではなかった。
このボスを攻略しなければ先には進めない。倒すべき憎らしいボス。
そんなことを心の中で思っただけでBANされることも判明したのだ。
最初にロイパーティーが全滅した時、最後のひとりが何もしていないのにBANされたのはこのためだった。
だから、姉さんがボスであることを意識してはならない。
ロイさんは冒険者協会に「仕様がおかしい! こんなの無理ゲーだろ」と猛抗議したようだが、冒険者協会がダンジョンを作っているわけではなく、ダンジョンマスターから運営委託を受けているだけであるため、攻略に関する質問や苦情を寄せられてもお答えしかねると一蹴されたんだとか。
おまけに、再登録手続きが殺到するせいで通常業務が滞るという理由で、地下40階の攻略は原則週1回までとするという規定まで設けられてしまった。
もしやBAN姉さんがダンジョンマスターなのかもしれない。
マーシェスダンジョンは地下40階が最下層なのか。
そんな憶測が流れ始めた頃、初めて攻略に成功したパーティーが出た。
BAN姉さんの攻略に成功したのは、南方から噂を聞きつけてやって来たパーティーで、地下40階までをたったの1週間で駆け抜けて到達したらしい。
成功者はパーティーのリーダー……が飼っているリスザルだった。
扉が開くと同時にリーダーの肩から飛び降りて制止も聞かずに駆けだしたリスザルが、BAN姉さんの膝に飛び乗り、何かを語り掛けるようにキキッと鳴くと、BAN姉さんは姿を消して宝箱が現れリスザルの手にはその箱を開けるための鍵が握られていたという。