白い結婚を言い渡されたお飾り妻ですが、ダンジョン攻略に励んでいます
突如として姿を現したわたしよりもふた回りほど大きな体躯の緑毛のクマを見て、ハットリが「うおっ」と驚きの声をあげる。
「手裏剣を出してちょうだい」
そう告げた途端、昨日ハットリが投げ捨てた手裏剣がきれいに重ねられた状態で目の前のテーブルに出現した。
「ふおぉぉぉっ!」
奇妙な感嘆の声をあげるハットリは、確かに素直な性格なのだろうと思う。
「やったぜ! てことは、ペットさえいれば手裏剣をあらかじめ大量に持たせておくことも可能?」
「もちろんよ」
「すげえ、便利過ぎじゃね? このサラマンダー、俺がもらってもいいの?」
ハットリが上気した顔でサラマンダーを見つめる。
そのサラマンダーはと言えば、エルさんとじゃれ合って楽しそうに遊んでいるところだった。
「いいも何も、ペットはBAN姉さんクリア者専属で誰かに譲渡することは不可能よ。ハットリは人間では15人目のクリア者だけど、実際にこのダンジョンでペットを動かしている冒険者は今のところふたりしかいないの。そのうちのひとりがわたし。もうひとりがユリウスさんっていう人で、ハットリが3人目ってことになるわね」
「ふぉぉっ、なんじゃそりゃ、超激レアってことか。やったぜ!」
ハットリが喜んでいる。
BAN姉さんのクリア方法がわかった後、事情を何も知らない飼い犬や自分の子供を連れて来てクリアを試みる人が続出したのだが、犬も猫も怖がって成功しなかったらしい。
人間の子供の場合、年齢が低いほど成功率が高いようで、次の階層に進みたいというだけであればその方法も有りなのだが、ペットを実戦で活かしたいとなるとそれは不可能になる。
クリア者のみがペットを保有できるため、ペットを利用するにはそのよちよち歩きの子をダンジョン攻略に連れて行かなければならないのだ。
それでは行ける場所が限定されてしまう。
よちよち歩きの子が成長するまで10年ほど待てばいい話だが、そんな長期計画を立てている冒険者などいない。
ダンジョン馬鹿なわたしたちは、我先にマーシェスダンジョンの踏破を目指しているのだから。
そんなわけで、このマーシェスダンジョンで実際にペットを連れている冒険者は2名しかいなかったのだ。
「その子に可愛い名前をつけてあげてね」
手元に返って来た手裏剣をさっそくサラマンダーに保管してもらっているハットリにそう促すと、しばし考えた後、よし決めた! と拳を握る。
「じゃあ、サラに決定! サラ、これからもよろしくなっ」
サラは嬉しそうに小さな炎をボワッと吐いてハットリの胸に飛びついた。
ところでそのグリーンベアの名前は?とハットリに聞かれて「くまー」だと答えると呆れた顔をされてしまった。
「なんだそのだせぇ名前は」
サラマンダーを「サラ」と命名するあなたには言われたくないわっ!
「手裏剣を出してちょうだい」
そう告げた途端、昨日ハットリが投げ捨てた手裏剣がきれいに重ねられた状態で目の前のテーブルに出現した。
「ふおぉぉぉっ!」
奇妙な感嘆の声をあげるハットリは、確かに素直な性格なのだろうと思う。
「やったぜ! てことは、ペットさえいれば手裏剣をあらかじめ大量に持たせておくことも可能?」
「もちろんよ」
「すげえ、便利過ぎじゃね? このサラマンダー、俺がもらってもいいの?」
ハットリが上気した顔でサラマンダーを見つめる。
そのサラマンダーはと言えば、エルさんとじゃれ合って楽しそうに遊んでいるところだった。
「いいも何も、ペットはBAN姉さんクリア者専属で誰かに譲渡することは不可能よ。ハットリは人間では15人目のクリア者だけど、実際にこのダンジョンでペットを動かしている冒険者は今のところふたりしかいないの。そのうちのひとりがわたし。もうひとりがユリウスさんっていう人で、ハットリが3人目ってことになるわね」
「ふぉぉっ、なんじゃそりゃ、超激レアってことか。やったぜ!」
ハットリが喜んでいる。
BAN姉さんのクリア方法がわかった後、事情を何も知らない飼い犬や自分の子供を連れて来てクリアを試みる人が続出したのだが、犬も猫も怖がって成功しなかったらしい。
人間の子供の場合、年齢が低いほど成功率が高いようで、次の階層に進みたいというだけであればその方法も有りなのだが、ペットを実戦で活かしたいとなるとそれは不可能になる。
クリア者のみがペットを保有できるため、ペットを利用するにはそのよちよち歩きの子をダンジョン攻略に連れて行かなければならないのだ。
それでは行ける場所が限定されてしまう。
よちよち歩きの子が成長するまで10年ほど待てばいい話だが、そんな長期計画を立てている冒険者などいない。
ダンジョン馬鹿なわたしたちは、我先にマーシェスダンジョンの踏破を目指しているのだから。
そんなわけで、このマーシェスダンジョンで実際にペットを連れている冒険者は2名しかいなかったのだ。
「その子に可愛い名前をつけてあげてね」
手元に返って来た手裏剣をさっそくサラマンダーに保管してもらっているハットリにそう促すと、しばし考えた後、よし決めた! と拳を握る。
「じゃあ、サラに決定! サラ、これからもよろしくなっ」
サラは嬉しそうに小さな炎をボワッと吐いてハットリの胸に飛びついた。
ところでそのグリーンベアの名前は?とハットリに聞かれて「くまー」だと答えると呆れた顔をされてしまった。
「なんだそのだせぇ名前は」
サラマンダーを「サラ」と命名するあなたには言われたくないわっ!