白い結婚を言い渡されたお飾り妻ですが、ダンジョン攻略に励んでいます
ダンジョンの入り口まで来ると、エルさんは入場の決まり事やダンジョン内で起こった想定外のハプニングをおもしろおかしく語ってくれた。その話に熱心に耳を傾けて笑っていたわたしは、ロイパーティーのビジター扱いで入場したことはおろか、地下40階まで一気に転移したことにすら気づいていなかった。
「じゃあ、あそこで鍵を受け取って来て」
エルさんにそう言われた時も、まだここが1階の受付の延長だと信じていたほどだ。
BAN姉さんの風貌を「なんか、いかにもレジャーランドの受付嬢って感じ」とまで思っていたのだから。
「こんにちは。鍵をいただけますか?」
冒険者カードを見せながらそう告げると、BAN姉さんが薄っすら笑ったように見えて、気づくといつのまにか手に真鍮の鍵を握っていた。
消えてゆくBAN姉さんに向かってありがとうございますとお礼を言って3人の元へと戻ると、ロイさんにいきなり抱きしめられた。
「すげえ! おまえ、すげえな!」
男性にこんなにも情熱的に抱きしめられるのはこれが初めてだったわたしは、どうしていいかわからずに棒立ちのままロイさんを見上げた。
彼はまた、少年のような顔で笑っていた。
しかしロイさんの機嫌がよかったのはここまでだった。
彼は、ボスクリア者専属になってしまうというペットの所有権をどうにかして自分のものにしたいと目論んでいたのだ。ロイさんは、わたしから鍵を受け取って宝箱を開け、タマゴを取り出した。
そこまではよかったのだが、そのタマゴから生まれた、中にどうやって収まっていたんだろうという大きさの緑毛のクマは、ロイさんの顔を見るなり明らかに怒った様子でいきなり強烈な左フックをかまし、ロイさんのことを吹っ飛ばしたのだった。
何が起きているのかさっぱりわからないわたしは、ダンジョン1階の「山分けスペース」でようやくエルさんから説明してもらって大まかな事情を把握した。
こういう時は正直に言わないとダメだとかなんとか、さっき言っていたのは誰だっけ?
わたしの了承も得ずに横取りするつもりだったのなら殴られて当然だわ。
くまーと名付けたわたしのペットをもふもふ撫でながらロイさんを一瞥すると、彼はばつの悪そうな顔で横を向く。
確かに宝の持ち腐れではある。
ダンジョンでお役立ちのペットをド素人が持っていても、便利機能を活かしきることはできないだろう。
「わたしも譲れるものなら譲りたいぐらいですけど、無理みたいなので仕方ないですね」
地下40階をクリアして次に進めるようになっただけでも、ありがたいと思っていただきたい。
「ではわたしはこれで失礼します。貴重な体験をさせてもらって楽しかったです。ありがとうございました」
「じゃあ、あそこで鍵を受け取って来て」
エルさんにそう言われた時も、まだここが1階の受付の延長だと信じていたほどだ。
BAN姉さんの風貌を「なんか、いかにもレジャーランドの受付嬢って感じ」とまで思っていたのだから。
「こんにちは。鍵をいただけますか?」
冒険者カードを見せながらそう告げると、BAN姉さんが薄っすら笑ったように見えて、気づくといつのまにか手に真鍮の鍵を握っていた。
消えてゆくBAN姉さんに向かってありがとうございますとお礼を言って3人の元へと戻ると、ロイさんにいきなり抱きしめられた。
「すげえ! おまえ、すげえな!」
男性にこんなにも情熱的に抱きしめられるのはこれが初めてだったわたしは、どうしていいかわからずに棒立ちのままロイさんを見上げた。
彼はまた、少年のような顔で笑っていた。
しかしロイさんの機嫌がよかったのはここまでだった。
彼は、ボスクリア者専属になってしまうというペットの所有権をどうにかして自分のものにしたいと目論んでいたのだ。ロイさんは、わたしから鍵を受け取って宝箱を開け、タマゴを取り出した。
そこまではよかったのだが、そのタマゴから生まれた、中にどうやって収まっていたんだろうという大きさの緑毛のクマは、ロイさんの顔を見るなり明らかに怒った様子でいきなり強烈な左フックをかまし、ロイさんのことを吹っ飛ばしたのだった。
何が起きているのかさっぱりわからないわたしは、ダンジョン1階の「山分けスペース」でようやくエルさんから説明してもらって大まかな事情を把握した。
こういう時は正直に言わないとダメだとかなんとか、さっき言っていたのは誰だっけ?
わたしの了承も得ずに横取りするつもりだったのなら殴られて当然だわ。
くまーと名付けたわたしのペットをもふもふ撫でながらロイさんを一瞥すると、彼はばつの悪そうな顔で横を向く。
確かに宝の持ち腐れではある。
ダンジョンでお役立ちのペットをド素人が持っていても、便利機能を活かしきることはできないだろう。
「わたしも譲れるものなら譲りたいぐらいですけど、無理みたいなので仕方ないですね」
地下40階をクリアして次に進めるようになっただけでも、ありがたいと思っていただきたい。
「ではわたしはこれで失礼します。貴重な体験をさせてもらって楽しかったです。ありがとうございました」