白い結婚を言い渡されたお飾り妻ですが、ダンジョン攻略に励んでいます

旦那様が領地にやってきました

 冒険者協会が各パーティーの代表者を招集するのは年に数回。
 協会の規約を改定するときや、冒険者のマナーやモラルの低下で何かトラブルが起きた時、そして今回のようなパーティーで共闘する際の事前の打ち合わせなどだ。

 明日は最下層の対サイクロプス戦に関して、ロイパーティーだけでは心もとないため他のパーティーにも協力を仰ぐことになっており、その場には当然、冒険者協会の会長も座長として参加する予定になっている。
 そう、冒険者協会の会長は領主である旦那様だ。

 執事のハンスからは、今日旦那様がこちらに来るとは聞いていないし、明日直行直帰なのかもしれない。
 話し合いの最中は顔を隠すなり変装するなりして誤魔化せばいいけれど、もしも旦那様がここを訪れるとなると、いろいろ困ることになるかもしれない。
 ぐるぐる考えながら、いつものロッキングチェアに座らせていた土人形を回収しようと近づいてギョッとした。

 右腕がもげているではないかっ!

 わたしの拙い土魔法は、エルさんとロイさんの根気強く献身的な指導によりそれなりに使い物になるようになった。
 王立高等学院には魔法科もあるが、わたしは普通科だったため魔法の知識は皆無で独学だ。
 エルさんと出会う以前のわたしの魔法といえば、土をいじっていると手のひらに乗せた土がモコモコと動き出してイモ虫のようになり、手から飛び降りてウネウネ這いながら逃げていくという、魔法とも言えないような代物だった。

 しかし成り行きでロイパーティーに加入することとなり、何ができるんだと問われて役に立たない程度のわずかな土魔法しか使えないと正直に答えると、ロイさんは眉間にしわを寄せながら「それをどうにかモノにしていくしかなさそうだな」と言ったのだ。
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