白い結婚を言い渡されたお飾り妻ですが、ダンジョン攻略に励んでいます

冒険者協会の会合に参加しました

 ビアンカさんの酒場の2階、ロイパーティーが拠点にしている部屋には今日もハットリがいた。
「ひっ! ど、どなたでしょうか!?」
「何びっくりしてるのよ、わたしよ、ヴィーよ」

 ハットリの視線はわたしの姿を頭のてっぺんからつま先まで三往復ぐらいして、ようやく納得したらしい。
 いつもカーゴパンツで髪をおさげにしているわたしが貴族の若奥様風の恰好をしているのだから、誰だかわからなくても無理はない。
「何だよ、ビビらせんなよ。他にも土から出てくるメンバーがいるのかと思っただろ。今日は会合とやらのために、そんなおめかししてきたのか?」
 そんなわけないでしょう!

「ハットリ、そのほっかむりと服、貸して」
「はあっ!?」

 あまりにも唐突なお願いに、ハットリがたじろいでいる。
 しかしここで時間を食っている場合ではない。

「だから脱いで。お願い! 説明している時間がないのよ、もう会合が始まってしまうわ」
「ほっかむりじゃなくて頭巾な」
「何でもいいわよう、早くしてっ!」

 わたしの剣幕に押されてハットリが戸惑いながらも服を脱ぎ始める。それをひったくって隣の部屋で着替えた。
 ドロワーズの上からサロペットパンツのような下衣をはき、上衣を羽織ってハットリの元に戻ると「合わせが逆だ」と言われて直された。

「頭巾は洗いたてのきれいなやつがあるから」
 そう言われて出て来たのは1枚の布で、それを器用に巻いてもらったらあっという間にハットリとおそろいのほっかむりになった。
 ほっかむりには、顔を全て出す結び方のほかに鼻と口まで覆う結び方もある。
 今回はもちろん鼻と口も覆ってもらった。

 あら、すごい。
 髪もまとめて中に入れたし、目しか見えていないからこれだったらバレやしないわ。
 そう思いながら視線を何気なく下に向けて驚いた。

 白い……ひもパン?

「ハットリの下着、セクシーすぎない? やだ、変態」
「あのなあ、おまえが脱げとか言うから俺がこんな格好になったんだからな。これは、ふんどしっつって俺の故郷では男はみんなこれだっつーの!」

 しまった、ハットリの攻めた下着なんてどうでもよかったわ。
 急がないと!

「じゃあ、行ってくるから。ありがとう、また後でね!」
 鉢植えに飛び込みながら手を振った。
 ハットリの大きなため息が聞こえた気がした。
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