白い結婚を言い渡されたお飾り妻ですが、ダンジョン攻略に励んでいます
ロイパーティーが初めて他のパーティーに協力を仰いだのは、地下48階のボス討伐だ。
リーダーのロイさんは地下47階をクリアしたその日の酒場での祝杯の後、自分の武器である大剣をわたしに「磨いといて」と手渡し、ふらっと酒場を出て行った。
まさかそれっきりロイさんが戻ってこないなんて思っていなかったわたしたちは、次の地下48階の攻略を進めてボス部屋まで辿り着き、そこから数日間ロイさんの帰還を待った。
しかし何の音沙汰もなく、ロイさん抜きでボス討伐という難関に立ち向かうにあたり、話し合いを重ねた末に他のパーティーに協力してもらうこととなったのだ。
合同討伐会への参加資格は、地下40階まで到達しているパーティーという条件付きで。
それに手を挙げてくれたのは、ユリウスさんと、元ロイパーティーのメンバーでわたしの加入と入れ違いぐらいに「友人と新しいパーティーを結成することにした」との理由で脱退したトミーさんだけだった。
BAN姉さんに手を焼き、そこで足止めを食っているパーティーは他にもたくさんある。
ロイパーティーのビジター扱いで地下48階の討伐に参加してボスを倒せば、クリアできてないBAN姉さんをとりあえずスキップして次に進めるため、もっとたくさん集まることを期待していたのだが。
その理由は、あまりにもロイパーティーが嫌われていたためだ。
リーダーのロイさんの、時にはライバルのパーティーを無理に押しのけてまでボス部屋一番乗りを果たさないと気が済まない呆れるほどの負けず嫌いな性質や、暴言、粗野な振る舞いは、まるでガキ大将のようだった。
しかも強いのだから、誰も文句が言えなかったのだ。
だから、わたしが加入するまでは他のパーティーとの交流も一切なかった。
そこに風穴を開けたのがわたしだと自負しているけれど、ロイさんがいなくなってしまった今となっては、それが良かったのかどうかわからない。
秘密主義で、他のパーティーに有益な情報など教えてやるものか!と言い張るロイさんを説得し、ダンジョンの階層別の詳細な地図を作って売ろうと提案したのはわたしだった。
「装備を強化するお金ないんでしょう? だったらそれを稼ぐために地図を公表しましょうよ。絶対に売れます」
地図を印刷するための初期費用はBAN姉さんのクリア報酬から自腹で出すからと言って、渋るロイさんの首をようやく縦に振らせたのだ。
その商いを通じて、わたしは個人的に他のパーティーとも交流を持つようになった。
なぜあなたみたいな普通の愛想のいい女の子があんな乱暴なパーティーにいるのかと聞かれる度に「ロイさんは身内には優しいんですよ」と答えた。
ロイさんの恋人なのかと聞かれた時は「いやいや、まさか! あの人はダンジョン一筋だからそういう目で女性を見ることは一切ありません」と答えた。
ロイさんの粗野な振る舞いでよそのパーティーと揉めた時には、わたしが頭を下げて回った。
「もう、あんなヤツのそばにいないほうがいいよ。うちのパーティーに来ない?」
そんな風に誘ってくれる人もいたし、ロイさんと大喧嘩するたびにもうこんなパーティーやめてやる!と何度考えたことか……。それでもやっぱりわたしはロイさんのそばにいたかった。
「それでもほっとけないんでしょう? それはもう恋だよ。だからどうしようもないよね」
優しい笑顔で頭を撫でてくれたユリウスさんは、よき理解者で、かといってロイパーティーの味方をしてくれるわけでもなく、毅然とした態度で中立の立場を貫いていた。
その一方で、ロイさんと武器がかぶる同じ大剣使いのジークさんが率いるパーティーは、とにかくロイパーティーを毛嫌いしている。過去にあれこれ揉めたことがあるらしい。地下48階の討伐隊メンバー募集の呼びかけに対してもさんざん邪魔をしてくれた。
パーティー単位でクリアするのが暗黙のルールのはずなのに、それを破って共闘したらBANされるかもしれないと嘘の情報を流したり、あんなパーティーの手助けなんてしないほうがいいと自分側に引き込んだりと、姑息なことをされた結果、手を挙げてくれたのがユリウスパーティーとトミーパーティーだけだったというわけだ。
そして今日、この会合のテーブルには、その天敵ともいえるジークさんも座っている。
これは間違いなく一波乱も二波乱もあるなと覚悟して気を引き締めた。
リーダーのロイさんは地下47階をクリアしたその日の酒場での祝杯の後、自分の武器である大剣をわたしに「磨いといて」と手渡し、ふらっと酒場を出て行った。
まさかそれっきりロイさんが戻ってこないなんて思っていなかったわたしたちは、次の地下48階の攻略を進めてボス部屋まで辿り着き、そこから数日間ロイさんの帰還を待った。
しかし何の音沙汰もなく、ロイさん抜きでボス討伐という難関に立ち向かうにあたり、話し合いを重ねた末に他のパーティーに協力してもらうこととなったのだ。
合同討伐会への参加資格は、地下40階まで到達しているパーティーという条件付きで。
それに手を挙げてくれたのは、ユリウスさんと、元ロイパーティーのメンバーでわたしの加入と入れ違いぐらいに「友人と新しいパーティーを結成することにした」との理由で脱退したトミーさんだけだった。
BAN姉さんに手を焼き、そこで足止めを食っているパーティーは他にもたくさんある。
ロイパーティーのビジター扱いで地下48階の討伐に参加してボスを倒せば、クリアできてないBAN姉さんをとりあえずスキップして次に進めるため、もっとたくさん集まることを期待していたのだが。
その理由は、あまりにもロイパーティーが嫌われていたためだ。
リーダーのロイさんの、時にはライバルのパーティーを無理に押しのけてまでボス部屋一番乗りを果たさないと気が済まない呆れるほどの負けず嫌いな性質や、暴言、粗野な振る舞いは、まるでガキ大将のようだった。
しかも強いのだから、誰も文句が言えなかったのだ。
だから、わたしが加入するまでは他のパーティーとの交流も一切なかった。
そこに風穴を開けたのがわたしだと自負しているけれど、ロイさんがいなくなってしまった今となっては、それが良かったのかどうかわからない。
秘密主義で、他のパーティーに有益な情報など教えてやるものか!と言い張るロイさんを説得し、ダンジョンの階層別の詳細な地図を作って売ろうと提案したのはわたしだった。
「装備を強化するお金ないんでしょう? だったらそれを稼ぐために地図を公表しましょうよ。絶対に売れます」
地図を印刷するための初期費用はBAN姉さんのクリア報酬から自腹で出すからと言って、渋るロイさんの首をようやく縦に振らせたのだ。
その商いを通じて、わたしは個人的に他のパーティーとも交流を持つようになった。
なぜあなたみたいな普通の愛想のいい女の子があんな乱暴なパーティーにいるのかと聞かれる度に「ロイさんは身内には優しいんですよ」と答えた。
ロイさんの恋人なのかと聞かれた時は「いやいや、まさか! あの人はダンジョン一筋だからそういう目で女性を見ることは一切ありません」と答えた。
ロイさんの粗野な振る舞いでよそのパーティーと揉めた時には、わたしが頭を下げて回った。
「もう、あんなヤツのそばにいないほうがいいよ。うちのパーティーに来ない?」
そんな風に誘ってくれる人もいたし、ロイさんと大喧嘩するたびにもうこんなパーティーやめてやる!と何度考えたことか……。それでもやっぱりわたしはロイさんのそばにいたかった。
「それでもほっとけないんでしょう? それはもう恋だよ。だからどうしようもないよね」
優しい笑顔で頭を撫でてくれたユリウスさんは、よき理解者で、かといってロイパーティーの味方をしてくれるわけでもなく、毅然とした態度で中立の立場を貫いていた。
その一方で、ロイさんと武器がかぶる同じ大剣使いのジークさんが率いるパーティーは、とにかくロイパーティーを毛嫌いしている。過去にあれこれ揉めたことがあるらしい。地下48階の討伐隊メンバー募集の呼びかけに対してもさんざん邪魔をしてくれた。
パーティー単位でクリアするのが暗黙のルールのはずなのに、それを破って共闘したらBANされるかもしれないと嘘の情報を流したり、あんなパーティーの手助けなんてしないほうがいいと自分側に引き込んだりと、姑息なことをされた結果、手を挙げてくれたのがユリウスパーティーとトミーパーティーだけだったというわけだ。
そして今日、この会合のテーブルには、その天敵ともいえるジークさんも座っている。
これは間違いなく一波乱も二波乱もあるなと覚悟して気を引き締めた。