白い結婚を言い渡されたお飾り妻ですが、ダンジョン攻略に励んでいます
 第一印象は最悪だったけど、結果的にロイさんたちのおかげでくまーと大金を手に入れたわけだし、まあ数回手伝ってあげようか。
 最初はそういうつもりだった。
 初心者で何の取柄もないわたしが、いきなり最前線で戦えるはずなどないことぐらいわかっていたから。
 
「それで転移装置で戻ったんだけど、ここでロイさんが『あ゛~~~っ!』って叫んで膝から崩れ落ちたんですよね」
「そんなこともあったねえ」
 エルさんと当時のことをハットリに説明しながら地下41層にやってきた。
 背後でトールさんも無言のままうんうんと頷いている。
 
「入り口で何かあったってことか?」
 言っている意味がわからないといった様子でハットリが首を傾げた。
 
「ここで拾ったイリジム鉱石を、このあたりまで運んで積み上げていたらしいの。少しずつ運べないかってことでね。それが全て消えていたのよ」
 あのときのロイさんの取り乱しようを思い出して、笑いながら答える。
 
「他のパーティーに取られたってことか?」
「いい線いってるけど、そうじゃなかったの」
 
 たしかに戦利品をよそのパーティーに横取りされて揉めることもある。
 でもあの頃はまだ、この階層まで到達しているパーティーがほとんどない状況で、ロイさんたちが離れていた時間もさほど長くなかった。
 よほどの人海戦術でも使わない限り、そんな短時間で全て奪える量ではなかったらしい。

 では消えたのはなぜか。
 ロイさんたちはミミックの仕業だと断定した。
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