白い結婚を言い渡されたお飾り妻ですが、ダンジョン攻略に励んでいます
会合が終わり酒場に戻って着替えた。
ハットリはソロでダンジョンに潜っているのか不在だ。
パーティーの連絡係であるビアンカさんに今回の会合の内容を伝えてから、待ち合わせ場所の広場へと向かう。
到着したのは約束の時間ちょうどぐらいで、旦那様は先にベンチに座っていた。
「お待たせして申し訳ありません」
駆け寄っていくと、旦那様はにっこり笑って立ち上がった。
「私もついさっき来たところだ。お疲れ様」
え、なぜわたしのほうが労われているの?
そんなに疲れた顔でもしているのかしら。
旦那様こそお疲れ様です」
「今日は私がイカ焼きを食べたい気分なんだ。付き合ってくれないか」
「はい。そうしましょう!」
ちょうど今日は、イカ焼きを食べたいと思っていたところだ。
旦那様が歩き出すと同時に自然に手を繋いできた。
冷たくてピリッとする感触で旦那様が手袋をしていないことに気づき、手元に視線を落とす。
さっきこの手でわたしたちを氷漬けにしようとしたのよね。怖い人だわ。
でも今日の旦那様はいつもより上機嫌だ。
わたしを気遣ってのことなのか、単純に機嫌がいいだけなのかはよくわからない。
髪が突然短くなったのは心を病んでいるせいではなくて、ダンジョンでミミックに食べられちゃっただけですから安心してくださいと言えたらいいのだけど、言ったら言ったで大変なことになるだろう。
「来月、ダンジョンでクラーケンの討伐会を予定しているんだ」
香ばしい焦げ目のついたイカ焼きを頬張っていると、旦那様がおもむろに話し始めた。
「一緒に来るか?」
「え……っと、わたしがクラーケンの討伐会にですか?」
「前にクラーケンの話をした時に興味深そうに聞いていたから、どうかと思ってね」
「いいえ、わたしは何の役にも立たないどころか足手まといになるでしょうから遠慮しておきます」
突然何を言い出すのやら、そんな身バレの危機は御免です!
実際、海上では土魔法はまったく使いようがない。
以前のクラーケン討伐会でも、わたしは浮かれてキャーキャーはしゃいでいただけだった。
そうだ。
あの時もわたしは、一緒に行こうと誘ってくれたロイさんに「何の役にも立たないから」と答えたっけ。
それでも当日になって「ここにいる全員、強制参加な」と言われて結局参加したんだ。
次もまた一緒に参加しようぜと言って満足げに笑っていたロイさんはもういない。
目の前に聳え立つ大樹を見上げているうちに、なんとも言えない虚しさが込み上げてきて視界が歪んだ。
ほろりとこぼれ落ちる涙を、旦那様には見つからないようにそっと拭った。
ハットリはソロでダンジョンに潜っているのか不在だ。
パーティーの連絡係であるビアンカさんに今回の会合の内容を伝えてから、待ち合わせ場所の広場へと向かう。
到着したのは約束の時間ちょうどぐらいで、旦那様は先にベンチに座っていた。
「お待たせして申し訳ありません」
駆け寄っていくと、旦那様はにっこり笑って立ち上がった。
「私もついさっき来たところだ。お疲れ様」
え、なぜわたしのほうが労われているの?
そんなに疲れた顔でもしているのかしら。
旦那様こそお疲れ様です」
「今日は私がイカ焼きを食べたい気分なんだ。付き合ってくれないか」
「はい。そうしましょう!」
ちょうど今日は、イカ焼きを食べたいと思っていたところだ。
旦那様が歩き出すと同時に自然に手を繋いできた。
冷たくてピリッとする感触で旦那様が手袋をしていないことに気づき、手元に視線を落とす。
さっきこの手でわたしたちを氷漬けにしようとしたのよね。怖い人だわ。
でも今日の旦那様はいつもより上機嫌だ。
わたしを気遣ってのことなのか、単純に機嫌がいいだけなのかはよくわからない。
髪が突然短くなったのは心を病んでいるせいではなくて、ダンジョンでミミックに食べられちゃっただけですから安心してくださいと言えたらいいのだけど、言ったら言ったで大変なことになるだろう。
「来月、ダンジョンでクラーケンの討伐会を予定しているんだ」
香ばしい焦げ目のついたイカ焼きを頬張っていると、旦那様がおもむろに話し始めた。
「一緒に来るか?」
「え……っと、わたしがクラーケンの討伐会にですか?」
「前にクラーケンの話をした時に興味深そうに聞いていたから、どうかと思ってね」
「いいえ、わたしは何の役にも立たないどころか足手まといになるでしょうから遠慮しておきます」
突然何を言い出すのやら、そんな身バレの危機は御免です!
実際、海上では土魔法はまったく使いようがない。
以前のクラーケン討伐会でも、わたしは浮かれてキャーキャーはしゃいでいただけだった。
そうだ。
あの時もわたしは、一緒に行こうと誘ってくれたロイさんに「何の役にも立たないから」と答えたっけ。
それでも当日になって「ここにいる全員、強制参加な」と言われて結局参加したんだ。
次もまた一緒に参加しようぜと言って満足げに笑っていたロイさんはもういない。
目の前に聳え立つ大樹を見上げているうちに、なんとも言えない虚しさが込み上げてきて視界が歪んだ。
ほろりとこぼれ落ちる涙を、旦那様には見つからないようにそっと拭った。