白い結婚を言い渡されたお飾り妻ですが、ダンジョン攻略に励んでいます
地下49階攻略についていくことになりました
それは売り言葉に買い言葉のような状況になったことが発端だった。
わたしはマーシェスダンジョンの初踏破に立ち会うことを半ば諦め、旦那様に誘われるまましばらく王都の本宅で暮らす予定だった。
その前日。
ロイパーティーのことや、ひとりぼっちになってしまうハットリのことを考えて、メンバーにハットリのことを頼もうと考えて酒場に赴いた。
ついでに何か困ったことがあればトミーさんやユリウスさんを頼れるようにと、ハットリを連れて挨拶に行こうとした時だった。
酒場の外に、道いっぱいに広がってガヤガヤ騒いでいる迷惑な集団がいる。
その脇をすり抜けようとしていたら嫌な声が聞こえたのだ。
「よお、ロイパーティーのリーダーさんじゃねえか。今日はあの妙なほっかむり着けてないのかよ」
声の方向に視線を向けると、迷惑な集団の中心でジークさんとその取り巻き立ちがニヤニヤしながらこちらを見ている。
「あれは、ほっかむりじゃなくて頭巾って言うのよっ!」
何だよ知ってたのかよと後ろで呟くハットリに、先日やっと覚えたのだと答える余裕もないままジークさんと睨み合う。
この往来を邪魔している集団の面々が武装していることに気づいて嫌な予感がよぎる。
「ねえ、まさかこの集団で地下49階の攻略に行くつもりじゃないでしょうね」
するとジークさんがニヤアッと笑った。
「そのまさかだよ。俺らがクリアしたら地下50階は一番下っ端の荷物係として連れていってやるよ。楽しみに待ってろ」
「このメンバーで? 無茶よ、絶対にクリアできないわ」
それどころか大惨事になるかもしれない。
そこまで言ったら士気が下がるだろうからさすがにそれは言わなかったけれど。
「おうおう、負け惜しみか?」
「なわけないでしょう! うちのパーティーはもう地下49階をクリアしているんだもの。その経験者が、この編成では無理だからやめておいたほうがいいってアドバイスしてあげているのよ。理解してる?」
あの階層はこんな人海戦術では勝てない。
この集団の中にはダンジョン初心者なのではないかと思しき装備の者も少なからずいる。
一気に最下層までジャンプできるようになるから地下49階の討伐に参加してみないかと手当たり次第に声をかけてかき集めたに違いない。
「随分と偉そうな言い方じゃねえか。無理かどうかやってみないとわからねえだろうが! 俺はもちろん勝算があると踏んでるぜ」
取り巻きたちが「そうだそうだ」と囃し立てる。
士気を高めるのはいいことだけれど、地下49階は気合とか物理攻撃ごり押しでどうにかなるフロアではない。
「無理なものは無理よ。強力な攻撃魔法を使えるメンバーいるの?」
「うるせえなあ。じゃあついて来いよ! アタッカーで殲滅するところを見せてやるよ!」
「望むところよっ! 手伝ったりしないからね!」
「ったりめーだ! 指くわえて見とけ!」
ダンジョンの入り口に向かう集団の最後尾で鼻息を荒くするわたしに、ハットリがおずおず声をかけてくる。
「ええっと……俺も行っていいのか?」
「いいわよ! ダメって言われてないんだから。でもわたし、夕食の時間になったら帰るから」
「ええっ!?」
そんなわけで、わたしとハットリはジークパーティーの地下49階攻略について行くこととなったのだった。
わたしはマーシェスダンジョンの初踏破に立ち会うことを半ば諦め、旦那様に誘われるまましばらく王都の本宅で暮らす予定だった。
その前日。
ロイパーティーのことや、ひとりぼっちになってしまうハットリのことを考えて、メンバーにハットリのことを頼もうと考えて酒場に赴いた。
ついでに何か困ったことがあればトミーさんやユリウスさんを頼れるようにと、ハットリを連れて挨拶に行こうとした時だった。
酒場の外に、道いっぱいに広がってガヤガヤ騒いでいる迷惑な集団がいる。
その脇をすり抜けようとしていたら嫌な声が聞こえたのだ。
「よお、ロイパーティーのリーダーさんじゃねえか。今日はあの妙なほっかむり着けてないのかよ」
声の方向に視線を向けると、迷惑な集団の中心でジークさんとその取り巻き立ちがニヤニヤしながらこちらを見ている。
「あれは、ほっかむりじゃなくて頭巾って言うのよっ!」
何だよ知ってたのかよと後ろで呟くハットリに、先日やっと覚えたのだと答える余裕もないままジークさんと睨み合う。
この往来を邪魔している集団の面々が武装していることに気づいて嫌な予感がよぎる。
「ねえ、まさかこの集団で地下49階の攻略に行くつもりじゃないでしょうね」
するとジークさんがニヤアッと笑った。
「そのまさかだよ。俺らがクリアしたら地下50階は一番下っ端の荷物係として連れていってやるよ。楽しみに待ってろ」
「このメンバーで? 無茶よ、絶対にクリアできないわ」
それどころか大惨事になるかもしれない。
そこまで言ったら士気が下がるだろうからさすがにそれは言わなかったけれど。
「おうおう、負け惜しみか?」
「なわけないでしょう! うちのパーティーはもう地下49階をクリアしているんだもの。その経験者が、この編成では無理だからやめておいたほうがいいってアドバイスしてあげているのよ。理解してる?」
あの階層はこんな人海戦術では勝てない。
この集団の中にはダンジョン初心者なのではないかと思しき装備の者も少なからずいる。
一気に最下層までジャンプできるようになるから地下49階の討伐に参加してみないかと手当たり次第に声をかけてかき集めたに違いない。
「随分と偉そうな言い方じゃねえか。無理かどうかやってみないとわからねえだろうが! 俺はもちろん勝算があると踏んでるぜ」
取り巻きたちが「そうだそうだ」と囃し立てる。
士気を高めるのはいいことだけれど、地下49階は気合とか物理攻撃ごり押しでどうにかなるフロアではない。
「無理なものは無理よ。強力な攻撃魔法を使えるメンバーいるの?」
「うるせえなあ。じゃあついて来いよ! アタッカーで殲滅するところを見せてやるよ!」
「望むところよっ! 手伝ったりしないからね!」
「ったりめーだ! 指くわえて見とけ!」
ダンジョンの入り口に向かう集団の最後尾で鼻息を荒くするわたしに、ハットリがおずおず声をかけてくる。
「ええっと……俺も行っていいのか?」
「いいわよ! ダメって言われてないんだから。でもわたし、夕食の時間になったら帰るから」
「ええっ!?」
そんなわけで、わたしとハットリはジークパーティーの地下49階攻略について行くこととなったのだった。