白い結婚を言い渡されたお飾り妻ですが、ダンジョン攻略に励んでいます
この階層のボス部屋の中で待ち受けているボスモンスターは、ここに辿り着くまでに戦ってきたゼリースライムと基本は変わらない。
しかし、大きさが桁違いだ。
大柄な体格のジークさんが真上を向いて見上げる高さの、ちょっとした丘のように聳え立つゼリー状の魔物は、これまで戦ってきた小さなゼリースライム以上に物理攻撃が効かない。
どんなに力任せに剣を振り回したり槍を突き刺したりしようとも、小さなティースプーンで巨大ゼリーをすくっている程度のダメージしか与えられない。
チクチクやり続けていたらいつかは倒せるだろうけど、それでは何日かかるかわからないレベルだ。
しかもこのボスは、猛毒攻撃を仕掛けてくる。
動きが緩慢で的が大きいため夢中で攻撃を繰り出していると、頭上から猛毒の雨が降ってきて体力がどんどん削られてしまうのだ。
「ここってさ、このぬるぬるマントが必須じゃね?」
「ぬるぬるマントじゃなくて、レインボーローブね」
ボス部屋の入口付近で徐々に余裕がなくなっていく戦況を眺めているわたしたちは、口には出さないもののこの討伐は失敗に終わるだろうと確信していた。
身体強化に加え、猛毒の雨に対処するためアタッカーの頭上に傘のような保護盾を展開しなければならなくなったバッファーがすぐに魔力切れを起こす。
魔力回復エーテルをガブ飲みしているが、それでも追い付かずに毒にやられるアタッカーが続出している。
ヒーラーの周りには人だかりができ、我先に解毒や治療をしてもらおうと順番を巡っていさかいが起き始めた時、下っ端の雑用係が悲痛な声を上げた。
「エーテルが残りわずかです!」
その叫びに一瞬周囲の動きが止まる。
それって、かなりヤバいんじゃね……?
きっと誰もがそう思っているはずだ。
ボスをはさんで反対側で戦っているジークさんたちには、この事態がまだ伝わっていないらしい。
そもそも自分たちには専属のサポーターがついているからって、戦うのに夢中になって全体に目を配れない時点でリーダー失格だ。
「なあ、いいのか? 手伝わなくても」
ハットリはもう居ても立っても居られない様子で半分腰を浮かせている。
「よしっ、そろそろねっ! くまー行くわよ」
「ガウッ」
隣に座っていたくまーが返事をして立ち上がると同時に、ハットリも「そうこなくっちゃ!」と張り切って立ち上がった。
「はーい、みなさん注目~~っ!」
手をパンパンと叩いて討伐メンバーの気を引く。
「只今から臨時ショップを開店します。エーテル1個につき1000メルですよー。それに毒もベタベタも防ぐこの優れもののレインボローブを5名様限定10万メルで販売します。早い者勝ち!」
ローブの裾をつまんでカーテシーをするようにポーズをきめるわたしの後ろでハットリが「あこぎすぎる……」と呆れた声をあげる。
たしかに相場の五倍ほどの価格設定だ。
でもね、ここはダンジョン内のしかもボス部屋だもの。
もっとふっかけたってよかったんだけど、初心者が多くてあまり懐が温かくなさそうだからこれでもオマケしてあげているのよ。
「ほら、ハットリ! デモンストレーションよ。レインボローブの防毒の凄まじさを見せつけてやってちょうだい!」
そしてハットリだけに聞こえるようにこっそり付け加える。
「クナイには必ず炎を付与して攻撃するのよ。無理は禁物、疲れたら撤退してね」
右手を腰に当て、左手でビシっとボスを指さす。
「ゆけ! ハットリ!」
「よっしゃあ!」
待ってましたとばかりに駆け出していくハットリの背中を見送りながら、たしかに彼はエルさんの言う通り素直な性格だなと思った。
しかし、大きさが桁違いだ。
大柄な体格のジークさんが真上を向いて見上げる高さの、ちょっとした丘のように聳え立つゼリー状の魔物は、これまで戦ってきた小さなゼリースライム以上に物理攻撃が効かない。
どんなに力任せに剣を振り回したり槍を突き刺したりしようとも、小さなティースプーンで巨大ゼリーをすくっている程度のダメージしか与えられない。
チクチクやり続けていたらいつかは倒せるだろうけど、それでは何日かかるかわからないレベルだ。
しかもこのボスは、猛毒攻撃を仕掛けてくる。
動きが緩慢で的が大きいため夢中で攻撃を繰り出していると、頭上から猛毒の雨が降ってきて体力がどんどん削られてしまうのだ。
「ここってさ、このぬるぬるマントが必須じゃね?」
「ぬるぬるマントじゃなくて、レインボーローブね」
ボス部屋の入口付近で徐々に余裕がなくなっていく戦況を眺めているわたしたちは、口には出さないもののこの討伐は失敗に終わるだろうと確信していた。
身体強化に加え、猛毒の雨に対処するためアタッカーの頭上に傘のような保護盾を展開しなければならなくなったバッファーがすぐに魔力切れを起こす。
魔力回復エーテルをガブ飲みしているが、それでも追い付かずに毒にやられるアタッカーが続出している。
ヒーラーの周りには人だかりができ、我先に解毒や治療をしてもらおうと順番を巡っていさかいが起き始めた時、下っ端の雑用係が悲痛な声を上げた。
「エーテルが残りわずかです!」
その叫びに一瞬周囲の動きが止まる。
それって、かなりヤバいんじゃね……?
きっと誰もがそう思っているはずだ。
ボスをはさんで反対側で戦っているジークさんたちには、この事態がまだ伝わっていないらしい。
そもそも自分たちには専属のサポーターがついているからって、戦うのに夢中になって全体に目を配れない時点でリーダー失格だ。
「なあ、いいのか? 手伝わなくても」
ハットリはもう居ても立っても居られない様子で半分腰を浮かせている。
「よしっ、そろそろねっ! くまー行くわよ」
「ガウッ」
隣に座っていたくまーが返事をして立ち上がると同時に、ハットリも「そうこなくっちゃ!」と張り切って立ち上がった。
「はーい、みなさん注目~~っ!」
手をパンパンと叩いて討伐メンバーの気を引く。
「只今から臨時ショップを開店します。エーテル1個につき1000メルですよー。それに毒もベタベタも防ぐこの優れもののレインボローブを5名様限定10万メルで販売します。早い者勝ち!」
ローブの裾をつまんでカーテシーをするようにポーズをきめるわたしの後ろでハットリが「あこぎすぎる……」と呆れた声をあげる。
たしかに相場の五倍ほどの価格設定だ。
でもね、ここはダンジョン内のしかもボス部屋だもの。
もっとふっかけたってよかったんだけど、初心者が多くてあまり懐が温かくなさそうだからこれでもオマケしてあげているのよ。
「ほら、ハットリ! デモンストレーションよ。レインボローブの防毒の凄まじさを見せつけてやってちょうだい!」
そしてハットリだけに聞こえるようにこっそり付け加える。
「クナイには必ず炎を付与して攻撃するのよ。無理は禁物、疲れたら撤退してね」
右手を腰に当て、左手でビシっとボスを指さす。
「ゆけ! ハットリ!」
「よっしゃあ!」
待ってましたとばかりに駆け出していくハットリの背中を見送りながら、たしかに彼はエルさんの言う通り素直な性格だなと思った。