白い結婚を言い渡されたお飾り妻ですが、ダンジョン攻略に励んでいます
「旦那様や使用人たちに内緒で毎日こそこそダンジョンに通い続けていたわたしに侯爵夫人のままでいる資格はないと思いますが、どうしてそこまでしてくださるのですか?」
旦那様の言う「最初から」がいつからなのかよく知らないが、わたしがダンジョン馬鹿でロイさんを好きだということも知っていながら結婚したことになる。
侯爵家の家格とこの容姿、そして魔力も高い旦那様がわたしを妻に選んだ理由がさっぱりわからない。
もっといい条件のご令嬢を選び放題だったのではないだろうか。
「好きだからに決まってるだろう」
あまりにもストレートに言われて息をすることさえ忘れて固まってしまった。
好きだから?
旦那様がわたしを? 好き?
ええぇぇぇぇぇっ!
ダンジョンで暴れているわたしを見初めたとか? そんな馬鹿な!
心臓が口から飛び出すんじゃないかというぐらいにドキドキしているのは、なぜだろう。
一旦落ち着かないと死ぬかもしれない。
「いや、あの……ええっ!?」
「すまない。こんなことを言ってもヴィクトリアを困らせるだけだな」
旦那様が寂しげに苦笑している。
「違います! とても嬉しいです。わたしは確かにロイさんのことを慕っていましたが、婚約が決まった時にその淡い想いは断ち切りました」
夢でロイさんに会って、好きだったのだと告白もできて、今はとてもすっきりしているのだ。
「旦那様と少しずつ愛を育んでいけたらと、まっさらな気持ちで嫁いだんですよ」
真っすぐに見上げると、旦那様は少し困ったような顔でまた笑った。
「そうか。では初夜の時に素直な気持ちを伝えていればここまで拗れていなかったというわけか」
「わたしも最初に冒険者だということを正直にお伝えすればよかったんですね」
旦那様の耳が心なしか赤い気がする。
「ヴィクトリア、ダンジョンの踏破が終わったら本当の夫婦になろう。その時には今きみに話せないことを、すべて話せるようになっているはずだ」
どうやら旦那様には、まだわたしに話していないことがあるらしい。
こっちが気付かなければ言えないこと――なんだろう?
冒険者であることを黙って押し通そうとしたことや、初夜を拒まれて傷ついたふりをしながら実は内心ホッとしていたことを考えると、旦那様にすべての非があるわけではない。
その時がきたら、いつどこでわたしを見初めたのかも白状させよう。
「本当にすまなかった。厚かましいことを承知で言うが、ずっと私のそばにいて欲しい」
懇願するように言われて、笑顔で頷いた。
「はい。こちらこそよろしくお願いします」
再びぎゅうっと抱きしめられた。
当然離婚だろうと覚悟していたのは、わたしだけでなく両親も同様だった。
しかしわたしが眠っていた間に、旦那様は両親にも大まかな事情を説明して謝罪したという。
さらに、前よりも距離が近くなっているわたしたちを見てホッとした顔をしていた。
「もう大丈夫なんでしょう? そういうことなら、あとは夫婦で仲良くしなさい」
「夫婦円満の秘訣は、すぐに謝ることだ」
両親に励まされて? わたしたちは予定通り王都のマーシェス邸へと向かったのだった。
旦那様の言う「最初から」がいつからなのかよく知らないが、わたしがダンジョン馬鹿でロイさんを好きだということも知っていながら結婚したことになる。
侯爵家の家格とこの容姿、そして魔力も高い旦那様がわたしを妻に選んだ理由がさっぱりわからない。
もっといい条件のご令嬢を選び放題だったのではないだろうか。
「好きだからに決まってるだろう」
あまりにもストレートに言われて息をすることさえ忘れて固まってしまった。
好きだから?
旦那様がわたしを? 好き?
ええぇぇぇぇぇっ!
ダンジョンで暴れているわたしを見初めたとか? そんな馬鹿な!
心臓が口から飛び出すんじゃないかというぐらいにドキドキしているのは、なぜだろう。
一旦落ち着かないと死ぬかもしれない。
「いや、あの……ええっ!?」
「すまない。こんなことを言ってもヴィクトリアを困らせるだけだな」
旦那様が寂しげに苦笑している。
「違います! とても嬉しいです。わたしは確かにロイさんのことを慕っていましたが、婚約が決まった時にその淡い想いは断ち切りました」
夢でロイさんに会って、好きだったのだと告白もできて、今はとてもすっきりしているのだ。
「旦那様と少しずつ愛を育んでいけたらと、まっさらな気持ちで嫁いだんですよ」
真っすぐに見上げると、旦那様は少し困ったような顔でまた笑った。
「そうか。では初夜の時に素直な気持ちを伝えていればここまで拗れていなかったというわけか」
「わたしも最初に冒険者だということを正直にお伝えすればよかったんですね」
旦那様の耳が心なしか赤い気がする。
「ヴィクトリア、ダンジョンの踏破が終わったら本当の夫婦になろう。その時には今きみに話せないことを、すべて話せるようになっているはずだ」
どうやら旦那様には、まだわたしに話していないことがあるらしい。
こっちが気付かなければ言えないこと――なんだろう?
冒険者であることを黙って押し通そうとしたことや、初夜を拒まれて傷ついたふりをしながら実は内心ホッとしていたことを考えると、旦那様にすべての非があるわけではない。
その時がきたら、いつどこでわたしを見初めたのかも白状させよう。
「本当にすまなかった。厚かましいことを承知で言うが、ずっと私のそばにいて欲しい」
懇願するように言われて、笑顔で頷いた。
「はい。こちらこそよろしくお願いします」
再びぎゅうっと抱きしめられた。
当然離婚だろうと覚悟していたのは、わたしだけでなく両親も同様だった。
しかしわたしが眠っていた間に、旦那様は両親にも大まかな事情を説明して謝罪したという。
さらに、前よりも距離が近くなっているわたしたちを見てホッとした顔をしていた。
「もう大丈夫なんでしょう? そういうことなら、あとは夫婦で仲良くしなさい」
「夫婦円満の秘訣は、すぐに謝ることだ」
両親に励まされて? わたしたちは予定通り王都のマーシェス邸へと向かったのだった。