白い結婚を言い渡されたお飾り妻ですが、ダンジョン攻略に励んでいます

3回目の会合です

 ジークパーティーが地下49階をクリアしたことを受けて三回目の会合が招集されたのは、わたしが実家に担ぎ込まれた5日後のことだった。
 わたしはそれまでの間、王都のマーシェス侯爵家の本宅で過ごした。
 
 訪問の前日にわたしが実家で神官による治療を受けたことは義両親には内緒にして予定通りの訪問を装った。
 領地の屋敷の方もあの日わたしが姿を消した件に関して旦那様が上手くごまかしてくれたようだ。

 夜は旦那様と同じベッドで眠ったけれど、本当の夫婦になるのはダンジョン攻略が終わってからと約束している。
 だから手を繋いで寝るだけという、この歳になって何ともおままごとのようなわたしたちだ。

「こういうのを生殺しと言うのだな」
 毎朝旦那様がブツブツつぶいていたけれど、お仕置きだと思ってもらいたい。
 
 わたしたちが頻繁に視線を絡めて微笑み合う様子を見て、義母はとても喜んでいる。
 早くこちらで一緒に暮らそうと熱心に言うお義母様への返答に困っていると、旦那様が助け舟を出してくれた。
「ヴィクトリアにも冒険者協会の仕事を手伝ってもらっているところなんです。もうすぐ落ち着くと思いますから楽しみにしておいてください」

 義父は会うたびに少しずつ衰弱している。
 きっと義母もそれが不安で、息子夫婦にそばにいてほしいのだと思う。

 冒険者協会の先代会長だった義父にダンジョンの大樹が開花したと報告したら喜んでくれるだろう。
 早くダンジョンの攻略を終えて王都での同居を開始しなければという新たな目標を秘めて迎えた三回目の会合だった。

 もう変装する必要のなくなったわたしは、普段着のワンピースを着てやって来た。
 旦那様とともに冒険者協会の入り口で馬車から降りたところで聞き覚えのある声が聞こえたと思ったら、いきなりぎゅうっと抱きしめられた。

「ヴィー! 心配していたんだよ、頭を打った上に窒息したんだろう? 怖い目に遭ったね、そばにいてやれなくてごめん」
 
 お腹に大穴が空いたことのあるあなたより全然マシです。
 そう言おうと思ったらグイッと引き離されて、わたしとエルさんの間に不機嫌そうな顔をした旦那様が立ちはだかった。
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