白い結婚を言い渡されたお飾り妻ですが、ダンジョン攻略に励んでいます
 マーシェスダンジョン地下50階。

 ボス部屋までの道中は何度も下見を繰り返していたこともあり非常に順調で、討伐隊のちょうどいい準備運動になった。

「みなさん、ここで装備とポーションの確認をしてください。足りない場合はくまーが配布しますのでこちらへ! 治療が必要な人はビアンカさんのほうへ!」

 ボス部屋の入り口前で最後の確認と、しばしの休憩をとる。
 中に入ってしまえば、サイクロプスに続いてそのままラスボス戦に突入するはずだ。

 ラスボスがどのような相手なのか、その情報は何もない。
 ダンジョンによって出現する魔物は多様であるため、よそのダンジョンの情報は参考にならない。
 だから想定外のことが起きまくる可能性もあり、その時は潔く撤退を決断したほうがいいだろうと覚悟している。
 その判断を誤らないようにと、わたしも気を引き締め直した。
 
 サイクロプスはボス部屋の中央に仁王立ちしてわたしたちを待ち構えていた。
 ラスボス戦の舞台にもなるはずの場所だけあって、これまでのどの階層のボス部屋よりも広い。
 
 巨体で皮膚の硬い単眼の魔物・サイクロプス。
 得意技は踏みつけ攻撃と斧の振り下ろしという単調な物理攻撃が大半だが、どちらも強力な攻撃であるためまともに食らうと致命傷になる。
 弱点は額の角。上背があるため角への物理攻撃は容易ではない。

 アタッカーは踏みつけ攻撃の対象にならないようにボスの背後に回って足元を攻撃し、ダウンを狙う。
 魔術師たちは積極的に眼球と角を狙い撃ちしつつ、斧の振り下ろしや振り回し攻撃がきた際には防護壁を張ってアタッカーをフォロー。
 遠距離部隊は、ゼリー弾をボスの手元に狙いを定めて撃ち続け、強力な武器である鉄の斧を落とすことを狙うという作戦でいく手筈になっている。

 ゼリー弾の材料はボススライムの戦利品だ。
 先日のハットリと山分けになった戦利品の中に大量のスライムゼリーが入っていた。
 ロイパーティーで討伐した時にも報酬としてもらっていたのだが、正直ゼリーの使い道がよくわからないままだった。

 しかしマーシェスダンジョンの構成を改めて考えると、すぐ手前の階層で入手したものが次の階層の攻略で役に立つというパターンが多いため、これをどう使えばいいのかをサブリーダーたちと話し合った。
 最初は「目に向かって投げる」という意見が出たが、眼球への攻撃は魔術師部隊に任せることになっている。
 ゼリーの膜が張ってしまうと、逆に魔法の妨げになってしまうかもしれないから却下となった。

 その代わり、我々もそうだったように武器を持つ手元がベタベタになると集中力が削がれるし、上手くいけば手が滑って武器を落とす可能性もある点に目を付けた。
 だからゼリーでサイクロプスの手元をベタベタにする作戦でいくことになった。
 
 そういうわけで遠距離攻撃のできる武器、つまり弓矢や銃で撃てるゼリー弾を作ってほしいと武器工房に相当きつい日程で無茶なお願いをし、受け取ったのが今日ダンジョンに出発する直前だった。

 
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