メールチェッカー 【2】
仕事帰りのスーパーは、いつも人でごった返している。
ショッピングカートの波をかき分けながら、環(たまき)は食材を選んでいた。
今夜は何にしよう――。
実は、迷うほど料理のレパートリーはない。
……だからこそ、悩んでいるのだが。
料理は苦手な方だ。
だが、好きな人の笑顔は最高の賞賛。
レタスをちぎってミニトマトを散らしただけのサラダでも、おいしいと言ってくれる和輝の気持ちに少しでも応えたい。
例えそれが、缶詰ミートソースを温めて乗せるだけの簡単パスタだとしても、コンビニ弁当より随分ましなのではと言い訳をする。
鍋物のおいしい季節、という店頭のPOPが目に入る。
よし、今夜はお鍋にしよう――。
和輝の家に土鍋はなかったが、実家も確か表面加工のフライパンで代用していた気がする。
もちろん今までに作ったことはなかったが、売られている鍋スープのパッケージを見れば、一通り材料は揃いそうだ。
後はその通りに入れて、くつくつとやれば何とかなるだろう。