メールチェッカー 【2】

和輝が帰省した土曜の夜、珍しく環の方からメールを送信した。

夜八時を過ぎても一向に鳴らない携帯に、とうとう我慢できなくなってしまったのだ。


『無事に着いた?今頃、久しぶりの家族団らん、楽しんでるかな?』


和輝の負担にならないような、軽い文面を心がけたつもりだ。

寂しさで押しつぶされそうな環には、そうすることが精一杯の思いやりだった。




テレビも音楽も消えた部屋で、携帯を手にしたままひたすら返事を待った。

ところが、待てど暮らせど携帯は鳴らない。


――こんなこと、今までは一度もなかった。

何かあったんだろうか……。




だが、特に事故や事件のニュースもなかったはずだ。

となれば、どうしても頭に浮かぶのは女の影。


和輝に限って……そんなこと。

あるわけがない。

ないと、信じている――信じたいよ。

< 53 / 60 >

この作品をシェア

pagetop