さみしがりやは、だぁれ?
「ちょっと、あなた大丈夫?」
「あ、は……」


目を開けると、国語の授業の真っ最中。どうやら彼女、しばらくの間、眠っていたらしい。


「授業中よ、気を抜かないこと」
「す、すみません……」


謝りながら、背中に流れる汗を感じる。
さっきのが、本当に夢――?

さみこちゃんに見つめられた温度のない瞳が、頭から離れない。今も、ずっと見られている気さえする。


「いや、そんなこと、ないか……」


おでこにも汗がにじんでいる。そのせいで前髪が変になっていないか、こっそり手鏡を出して確認した。

教科書と一緒に、鏡を持ち上げる。変にうねっていない前髪に、彼女は安堵の息を漏らす――はずだった。


「!」


強い視線を感じて、鏡の中を見る。鏡を少しズラすと、後ろの席までよく見えた。強い視線は、そこから感じる。


「〜っ!」


まさか現実のさみこちゃんが、私を睨んで――!

意を決して鏡を覗く。だけどさみこちゃんは板書中で、視線はノートへ向いていた。


「……ーっ、はぁ」


心配して損した。

安堵していたら、また先生に見つかった。そのせいで彼女は放課後、プリントを仕上げる羽目になる。



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