さみしがりやは、だぁれ?
「あー、やっとプリント提出できた。よりにもよって、難しい問題ばっかり!」


時間がかかってしまったためか、教室に戻ると誰もいなかった。

静かな教室で帰り支度をする際、彼女は頭の中で、さっき職員室で言われたことを思い出す。


『そういえば、あなたが言った言葉だけど』
『言葉?』

『〝さ〟から始まる、ある人の名前を言ってたでしょう?』
『あ〜』


さみこちゃんだ、と。
すぐに合点がいった。

答えが出てスッキリした彼女とは反対に、先生は彼女から受け取ったプリントにシワが入るまで、手に力を込める。


『もう、その名前は言わない方がいいわ』
『え、なんで?』

『昔、この学校で亡くなった生徒の名前だからよ』
『!へぇ、そんなことが……』


なんとなく、思い出した。
そして呟いてしまった。


「さみこちゃん、か」

「呼んだあ?」


ヒュッと、彼女の息が、一瞬止まる。

横を見ると、いつの間にか影が一つ。
薄気味悪い笑みが、隣に浮かんでいる。

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