エリート海上自衛官の最上愛
 思わずそう呟くと、狂おしいほどに力が込められていた彼の腕が少し緩む。晃輝が芽衣の額に自分の額をくっつけた。

「芽衣、愛してるよ。必ずもう一度、俺のものにする」

 涙に濡れる頬に張り付いた一筋の髪をそっと取り、そのまま芽衣の髪を大きな手で梳く。その仕草に、芽衣の身体が熱くなった。

 髪に触れる大きな手の感覚に、はじめて気持ちを伝え合ったあの夜に交わした口付けが頭に浮かぶ。

 彼の視線が熱を帯びる。

 ……けれど。

「——いや、ダメだな」

 彼は目を閉じて呟いた。芽衣に言ったというよりは自分に言い聞かせているのだろう。ふうっと深い息を吐いて、身を離そうとする彼のシャツを咄嗟に芽衣は、ギュッと掴んだ。

 ふたりは恋人同士ではなくなった。それはそうかもしれないが、放してほしくないと思う。

 それどころか……。

 少し意外だというような目でこちらを見る彼に、芽衣の頬が熱くなった。

 恥ずかしいことをしているという自覚はある。彼の言うことは正しいこともわかっている。

「だけど……」

 自分が彼にお願いしたこととは矛盾しているけれど……。

「わ、私がそうしてほしいって言ったら……」

 掠れた声でそう言った芽衣の濡れた唇に、彼は優しいキスをした。そして、誓いの言葉を口にした。

「絶対に一緒に生きていく道を見つけてやる」
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