エリート海上自衛官の最上愛

初デート

 朝の日差しが差し込む芽衣の部屋の鏡の前で、芽衣はいつもより入念にメイクを施した自分の顔をチェックしている。

 迷った末に、髪はいつもより高い位置で結び、お気に入りのシュシュを着ける。服装は、水色のTシャツに、紺色のワイドパンツだ。

「変じゃないかな……?」

 鏡の中の自分に問いかける。

 横須賀に来てからは、なかなか時間が取れないけれど、芽衣だって友達とおしゃれをして出かけることはある。けれど、今日はそういうお出かけとは訳が違う。

 なにせ人生初のデートなのだから。

 晃輝のマンションで、ふたりのこれからについて話し合ったのが一週間前のこと。あの日彼は次の週の日曜日、ふたりでどこかへ出かけようと言ったのだ。

 それからの一週間を、芽衣はソワソワした気持ちで過ごした。

 仕事中よりも少し綺麗めなスタイルではあるのだが、派手すぎることはないはず。念のため友達にも写真を見てもらって、絶対に大丈夫と太鼓判を押してもらったが、それでもやっぱり自信がない

 ポニーテールの位置は高すぎ?

 浮かれているみたいに見えるかな?

 やっぱり仕事中と同じ高さの方がいいかも……。

 そんなことを考えていると、玄関の呼び鈴が鳴る。時刻は午前九時。

 晃輝が迎えにきたのだ。

「車だからびっくりしました」

 うみかぜの前に停まっている車に乗り込んで芽衣は晃輝にそう言った。

 迎えにいくと言われてはいたけれど、まさか車だと思わなかったからだ。

「芽衣がどこに行きたくても連れていけるようにね」

 運転席でハンドルに手を置いてにっこりと笑う晃輝に、芽衣の胸はキュン跳ねた。

 気のせいか、今日の彼はいつもと少し違って思えた。

 Tシャツに、デニムのパンツを履いているからか、いつもよりリラックスしているように思える。

「どこに行きたいか決めた?」

 問いかけられて、芽衣は眉を下げた。

「考えてみたけど決められなかったんです……。す、すみません」

 ふたりで出かけようと晃輝に言われた際、行き先は芽衣が決めていいと言われていたのだ。それから芽衣は一生懸命考えたのだが、どうしても決められなかった。

< 105 / 182 >

この作品をシェア

pagetop