エリート海上自衛官の最上愛
「俺はそうは思わない。不安な気持ちも心配だという思いも全部俺にぶつけてほしい。俺にはそれをすべて受け止める覚悟がある」

 強い視線が芽衣の胸を貫いた。

 ——受け止める覚悟がある。

「俺は、海上自衛官の家族がどんな思いで待っているかを知っている。だからこそ受け止めて共有したいと思うんだ。そしてそんな想いで俺を待ってくれている人のために職務をまっとうする。力になると思うくらいだ」

 ——力になる。

 まさか彼がそんな風に言うとは思わなくて芽衣は言葉を失った。けれどすぐに彼ならばそうなのだろうと納得する。つらい経験をした彼だからこそ、待つ人の気持ちを共有し受け止めたいと願うのだろう。

「それでも、待つ者の心の負担は変わらない。俺が船上にいることには変わらないのだから。……だから俺は」

 彼はそこで言葉を切って、芽衣の肩を両手で優しく包んだ。

「約束する。俺は絶対に帰ってくる」

 絶対に帰ってくるという言葉に、芽衣は自分の心が大きく動くのを感じた。

 晃輝に優しく引き寄せられ、逞しい腕の中に包まれる。ギュッと力が込められた。

「……約束する」

 芽衣の髪に寄せた唇が、熱い言葉を紡ぎ出す。

「だから芽衣。俺の帰る場所になってくれ。なにがあっても必ず君のところへ帰ってくる。誓うよ」

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