エリート海上自衛官の最上愛
 その堅い約束に、芽衣の胸が燃えるように熱くなった。彼の強い想いに、彼のいない日々の不安をひとりで乗り越えなくてはならないと怯えていた気持ちが包まれていく。

「絶対に帰ってくるって約束してくれますか?」

 思わず芽衣はそう問いかける。

 有事の際は、お互いの想いだけではどうにもならないことは、わかっている。それでも彼に約束してもらうことこそが大切なのだと、強く思った。

「心配だから行ってほしくない言って、私、泣いてしまうかも……」

「言ってくれ。泣いたっていい」

「だけどきっとずっとだと思います。晃輝さんが船上にいる限りいつまでもこの気持ち変わらないから」

「ああ、いつまででもだ。俺が船を下りるその日まで」

 晃輝がそっと身を離して、大きな両手で芽衣の頬を包んだ。自分を見つめる彼の視線にこれ以上ないくらいに熱い想いが込められている。芽衣の胸が痛いくらいに高鳴った。

「誓うよ」

 すぐに彼との道を歩むと決断はできなかった。それができるほど、芽衣の過去は、軽くはない。

 ——それでも。

 受け止めるという言葉と。

 絶対に帰ってくるという彼の約束は、芽衣の心に深く深く刻まれた。
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