エリート海上自衛官の最上愛
約束
直哉の敗北宣言
日が落ちた後の横須賀を望むうみかぜの窓から、芽衣は外を眺めている。
時刻はまだ七時半を回ったところだけれど、客はひとりもいなかった。昼営業から通して少し客足が伸びない原因は、芽衣にも心あたりがある。
一週間前から、いずもが航海に出ているからだ。
シーワールドでのデートの二日後に晃輝は航海へ出ていった。三カ月以上帰ってこなかった前回の航海とは違って、今回はそれほど長くはないと彼は言ったが、戻りがいつかは知らされていない。
テーブル席の調味料入れをひとつひとつ丁寧に拭きながら、芽衣は窓の外を見ていた。
——心配だという想いに変わりはない。
ここから見える海は穏やかだけれど、いずもがどの海域にいるのかはわからない。その海の天候も不明なのだから。
それでも、芽衣は自分の心の中の変化を感じていた。
不安でたまらないこの気持ちは彼と共有しているのだ。芽衣ひとりのものではない。そう思うと、ずっしりとした重い袋が半分だけ軽くなるような気がした。
そして。
『約束する。絶対に帰ってくる』
力強く約束してくれたあの声音がしっかりと耳に残っていて、芽衣の心を励ましてくれた。
いつだって彼は芽衣のことを優先させてくれた。その彼が誓ってくれたのだ。
ガラガラと店先の扉が開く音がして、芽衣は顔を上げて振り返る。
「いらっしゃ……」
言いかけて口を閉じた。
少し気まずそうな表情で、暖簾をくぐってきたのは、直哉だった。
彼がここに来るのは、あの台風の日以来だ。
「直くん、来てくれたんだ」
時刻はまだ七時半を回ったところだけれど、客はひとりもいなかった。昼営業から通して少し客足が伸びない原因は、芽衣にも心あたりがある。
一週間前から、いずもが航海に出ているからだ。
シーワールドでのデートの二日後に晃輝は航海へ出ていった。三カ月以上帰ってこなかった前回の航海とは違って、今回はそれほど長くはないと彼は言ったが、戻りがいつかは知らされていない。
テーブル席の調味料入れをひとつひとつ丁寧に拭きながら、芽衣は窓の外を見ていた。
——心配だという想いに変わりはない。
ここから見える海は穏やかだけれど、いずもがどの海域にいるのかはわからない。その海の天候も不明なのだから。
それでも、芽衣は自分の心の中の変化を感じていた。
不安でたまらないこの気持ちは彼と共有しているのだ。芽衣ひとりのものではない。そう思うと、ずっしりとした重い袋が半分だけ軽くなるような気がした。
そして。
『約束する。絶対に帰ってくる』
力強く約束してくれたあの声音がしっかりと耳に残っていて、芽衣の心を励ましてくれた。
いつだって彼は芽衣のことを優先させてくれた。その彼が誓ってくれたのだ。
ガラガラと店先の扉が開く音がして、芽衣は顔を上げて振り返る。
「いらっしゃ……」
言いかけて口を閉じた。
少し気まずそうな表情で、暖簾をくぐってきたのは、直哉だった。
彼がここに来るのは、あの台風の日以来だ。
「直くん、来てくれたんだ」