一途な海上自衛官は時を超えた最愛で初恋妻を離さない~100年越しの再愛~【自衛官シリーズ】
 大きな声で悔しがる彼に芽衣は目を剥いた。

「な、直くん……!」

 他に客がいないとはいえ、あまりにもあけすけな言葉に芽衣の頬が熱くなった。

「そりゃ、関係を壊したくなくて気持ちを言えなかった小心者の俺が悪いんだけど。やっぱりエリートには敵わないな」

 大っぴらに悔しがって芽衣を見る。

「芽衣、おばちゃんに俺から報告しておくからな。芽衣に超絶カッコいいエリートの彼氏ができましたって」

 そんなことまで言う彼に、芽衣は思わず言い返す。

「や、やめてよ! そんな言い方、おばちゃんが心配しちゃうよ。それに、私……まだ……」

 彼と生きていくことを完全に決意できているとは言えない状況なのだ。そんな状態で従伯母に報告なんてできるはずがない。

 カウンターに頬杖をついたまま、直哉が芽衣を軽く睨んだ。

「でもお前、この前とは全然顔つきが違うぜ。覚悟ができたって感じがする」

「え……?」

「俺が何年お前を見てきたと思ってる? 芽衣のことはお前よりよくわかってるよ。この前の青い顔をしたお前なら俺にもまだチャンスがあるかもって思ったけど、もう無理だな」

 直哉がそう言って、天井を仰いだ。

「そんな顔されたら俺ももうなにも言えないな。……仕方がないから手のかかる妹の新しい一歩を応援するよ」

 さりげなく敗北宣言をする直哉に芽衣の胸が感謝の気持ちでいっぱいになる。彼の強さと優しさが、芽衣から大切な兄のような存在を奪わないでくれたのだ。

「直くん……ありがとう」

 そこでマスターが山盛りの生姜焼きを載せた盆を持って厨房から出てきた。

「はい、お待たせ。生姜焼き定食だ」

「ええ⁉︎ マスターこれいつもより多くない?」

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