一途な海上自衛官は時を超えた最愛で初恋妻を離さない~100年越しの再愛~【自衛官シリーズ】
思わずそう尋ねずにいられなかったのは、この写真の中の女性を、他人だとは思えなかったからだ。北海道出身の芽衣とまさか遠い親戚だというわけではないだろうが……。
「いや、彼女は生涯独身だったんだ。なんでも若い頃、海軍の将校さんと恋仲になって婚約もしていたらしい。だがお相手の方は、どうやら戦死されたようだ。……時期的に第一次対戦の頃だな」
マスターが、やや声を落とした。
「ご遺体が戻らなかったそうだからなおさら、諦めがつかなかったのだろう。みおさんは、どんなにいい縁談にも耳を貸さずに独り身を貫いたそうだ。『自分はここであの人を待っている』と言っていたと、爺さんから聞いたな」
その話に芽衣は息が止まりそうな心地がした。
まったく縁もゆかりもないはずの女性の人生が、自分と重なって思えるのはどうしてだろう。
彼女は、まさに今芽衣がいるこの場所で、船上にいる愛おしい人を待ち続けていたのだ。偶然なのだと思うけれど、それでは済まされないほどの、惹きつけられるなにかを感じていた。
「他に、写真はないのですか?」
マスターの手元の箱を見る。
もはや他人とは思えないほど並々ならぬ繋がりを感じている。彼女のことをもっと知りたいと思った。
「いや写真はそれだけだ。だがみおさんが綴った手記があるよ。読んでみるかい? 昔の人の字だから少し読みにくいけど」
そう言ってマスターが箱から取り出したのは冊子の表紙には『うみかぜのこと』と書かれてある。どうやら彼女が両親から引き継いで切り盛りしていたうみかぜについて、晩年に書いたもののようだ。
茶色く変色してはいるけれど、中はしっかり読める状態だった。
マスターがそっとページをめくり、首を傾げた。
「……いやこれは、どちらかというとレシピ集かな?」
「いや、彼女は生涯独身だったんだ。なんでも若い頃、海軍の将校さんと恋仲になって婚約もしていたらしい。だがお相手の方は、どうやら戦死されたようだ。……時期的に第一次対戦の頃だな」
マスターが、やや声を落とした。
「ご遺体が戻らなかったそうだからなおさら、諦めがつかなかったのだろう。みおさんは、どんなにいい縁談にも耳を貸さずに独り身を貫いたそうだ。『自分はここであの人を待っている』と言っていたと、爺さんから聞いたな」
その話に芽衣は息が止まりそうな心地がした。
まったく縁もゆかりもないはずの女性の人生が、自分と重なって思えるのはどうしてだろう。
彼女は、まさに今芽衣がいるこの場所で、船上にいる愛おしい人を待ち続けていたのだ。偶然なのだと思うけれど、それでは済まされないほどの、惹きつけられるなにかを感じていた。
「他に、写真はないのですか?」
マスターの手元の箱を見る。
もはや他人とは思えないほど並々ならぬ繋がりを感じている。彼女のことをもっと知りたいと思った。
「いや写真はそれだけだ。だがみおさんが綴った手記があるよ。読んでみるかい? 昔の人の字だから少し読みにくいけど」
そう言ってマスターが箱から取り出したのは冊子の表紙には『うみかぜのこと』と書かれてある。どうやら彼女が両親から引き継いで切り盛りしていたうみかぜについて、晩年に書いたもののようだ。
茶色く変色してはいるけれど、中はしっかり読める状態だった。
マスターがそっとページをめくり、首を傾げた。
「……いやこれは、どちらかというとレシピ集かな?」