エリート海上自衛官の最上愛
「こ、晃輝さんっ、私……自分で歩けます」

「だけど身体に力が入ってないみたいだし」

「でも、重いでしょう」

「全然。俺、芽衣なら何人でも抱いていられる」

 彼は軽々と芽衣を抱いたまま、すたすたとリビングまでの廊下を行く。ソファに優しく下ろして、自分は床にひざまずいた。

 大きな両手で芽衣の頬を包み込み真剣な表情になった。

「本当に、心配かけてごめん。規則として親父のところへ連絡がいくのは仕方がないが、芽衣がどんな気持ちになるのかと思うと……気が気じゃなかった。はじめて自衛隊の規則が憎いと思ったよ」

 両親のトラウマを抱えている芽衣に対する気遣いに、芽衣の胸がギュッとなった。

 頬に感じる確かな彼の温もりに自分の手を重ねて目を閉じる。

 帰って来てくれた。

 それをしっかりと実感して芽衣はゆっくりと目を開いた。

「大丈夫です。私、今日はそれを晃輝さんにお話ししたかったんです。私、もう迷いません。晃輝さんと生きていきたい。……覚悟ができました」

 真っ直ぐに晃輝を見つめてそう言うと、彼は目を見開いた。

「芽衣」

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