エリート海上自衛官の最上愛

甘い生活

肌ざわりのいい冷たいシーツに頬ずりをして、芽衣はゆっくりと目を開く。視界の先の大きな窓の向こうは夕日が照らす大海原が紫色と橙色のクラデーションを作っていた。

 一瞬自分がどこにいるのかわからなくて、芽衣は起き上がり周囲を見回す。大きなベットに一糸まとわぬ姿でいることに気がついて頬を染める。ここが晃輝の寝室だということに気がついた。

 彼が怪我をしたという連絡を受けて病院に駆けつけてこのマンションへやってきたのがお昼頃、それからふたりは一緒に生きていくということを誓い合い、このベットで愛を確かめ合ったのだ。

 晃輝ははじめてのことに戸惑う芽衣を急かしたりすることなく優しく時間をかけて、芽衣の緊張をほぐしてくれた。

 幸せな幸せな時間を過ごしたけれど、いつの間にか眠ってしまったようだ。随分時間が経っている

『疲れたな、寝てていいよ』

 目を閉じる時、そう言って優しく頭を撫でてくれていた晃輝の姿は見あたらない。先に起きてどこかへ行ったのだろうか?
 芽衣がそう思って首を傾げていると。

「起きたのか」

 リビングへ続くドアが開いて晃輝が入ってきた。

「きゃあ!」

 思わず芽衣は悲鳴をあげる。慌ててシーツをたくし上げた。服を着ていないからだ。
 晃輝が驚いたように足を止め、真っ赤になる芽衣を見て、くっくと笑った。

「さっきは見せてくれたのに」

「さっ……! そ、それとこれとは違います!」

 そもそもさっきだって恥ずかしかったことには変わりない。もちろん最後の方はそんなことを気にする余裕はなかったけれど、それと今とはわけが違う。

 晃輝が笑いながら、ウォークインクローゼットへ行って黒いTシャツを手に戻ってくる。そして芽衣に頭からすっぽりと被せるように着せた。大きな彼のTシャツで、とりあえず芽衣の恥ずかしいところは隠れた。

 ほっとする芽衣を、晃輝は後ろから包み込むように抱き、髪に顔を埋め優しい声で問いかける。

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