エリート海上自衛官の最上愛
「身体は大丈夫か? 少し無理をさせてしまった」

 それが、さっき愛し合ったことを受けても言葉だと気がついて、芽衣の頬が熱くなった。

「だ、大丈夫です……。寝てしまってごめんなさい」

 はじめてということで予想していた怖いことや痛いことはなにもなかった。彼が緊張して固くなる芽衣の身体を、時間をかけて優しくほぐしてくれたからだ。けれどそれと引き換えのように芽衣はくたくたになってしまったのだ。

 彼だって同じようなことをして、しかも航海を終えて帰ってきたばかりなのに平然としていられるのが信じられない。さすがは普段から鍛えている自衛官だ。

「いや、まだ眠いなら、好きなだけ寝てていいよ」

「大丈夫です。少しすっきりしましたから」

「ならよかった」

 安心したようにそう言って、彼は芽衣をギュッと抱いた。

 その感覚に芽衣の胸は幸せな想いでいっぱいになる。愛する人と、ついに結ばれたのだという喜びに満たされた。

「昼食を食べていないから、お腹が空いてるだろう。少し早い夕食にしよう。もう準備はできてるから、シャワーを浴びておいで」

「え? 晃輝さんが料理されたんですか?」

 芽衣は驚いて彼を振り返った。

「ああ、まあ簡単なものだけど。芽衣は喜ぶんじゃないかと思って」

 夕食、喜ぶというワードに首を傾げながら、彼に促されてシャワーを浴びる。

 芽衣が寝ている間に、晃輝が近くの店で調達してきてくれた部屋着を身につけてリビングへ行くと、キッチンから晃輝が芽衣を手招きしている。

「これは?」

 レトルトカレーのパッケージが並んでいる。

「海上自衛隊カレー?」

 ポップな船が描かれた箱を手に取って、芽衣は説明書きを読む。海上自衛隊所属の各船艦で金曜日に出されるというカレーを市販用にしたものだ。

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