エリート海上自衛官の最上愛
 彼との付き合いがこんなに甘いものだとは想像もしてなかった。もともと優しい人だけれど、それに愛情表現が加わるとなんだか芽衣は真綿に包まれているような気持ちになってしまう。

「寝顔も可愛いかったよ」

 ご機嫌でそう言って、彼は芽衣を閉じ込めるように両脇に手をつく。その視線がゆっくりと下りてきて……。

 今度は深くて熱いキス。

 芽衣の背中が甘く痺れて、身体の奥がジュンととろけるような感覚に襲われる。昼間も数えきれないくらい交わしたはずなのに、まるではじめてのように胸が高鳴る。芽衣の中を余すことなく優しく辿る感覚に、少しぼんやりとした頃、ようやく唇が離れる。
 芽衣をギュッと抱きめて、晃輝がくぐもった声を出した。

「……身体、まだつらいよな」

 芽衣に言ったというよりは、自分を戒めるような呟きに、芽衣の胸がどきんと跳ねた。答える先に、彼は芽衣から身を離そうとする。

「なんでもない、気にしないでくれ」

 その彼の腕をとっさに掴み、そのままギュッと力を込める。

 唐突な芽衣の行動に不思議そうにする彼に、ドキンドキンと鳴る胸の鼓動を聞きながら目を閉じて口を開く

「大丈夫です。さっき少し寝ましたし、カレーも食べさせてもらいましたし……だから……」

 自分からこんなことを言うなんて、はしたないと思われるかもしれないという考えが頭をよぎる。けれど伝えたかった。

 彼はまたいつ航海へ出るかわからない身なのだ。だからこそ一緒にいる時間は大切にしたい。ずっと腕の中にいて肌を合わせていたいくらいだった。

 恐る恐る目を開けると、情熱的な視線が芽衣を捉えている。

 角ばった大きな手が、芽衣の髪をかきあげて、赤く染まる芽衣の耳に、低い声が囁いた。

「ベッドへ行こうか」
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