エリート海上自衛官の最上愛
 以前のうみかぜの建物の前に立ち微笑んでいるひと組の男女が仲睦まじそうに寄り添っている。女性はみお、その隣が武志だろう。
 彼が晃輝にそっくりだったからだ。

 海軍の軍服を着て背筋をすっと伸びたその姿が、イベントの日に見た制服姿の晃輝と重なった。胸にあの日の衝動が蘇る。自分は彼と一緒にいるべきなのだと強く感じたあの胸の高鳴りだ。

 ——もう言葉で確認する必要はないように思った。

 晃輝を見ると彼も目を見開いている。これがただの偶然の一致ではないと感じているのが芽衣にもわかった。今の芽衣と同じ衝撃を感じている。

 晃輝が箱から葉書を取り出す。

 宛名は衣笠みお、差出人は大谷武志。

 差出人の住所が某所となっていることを考えると、言えない場所から出したものなのだろうか。

《みおさん、お元気ですか。私は息災です。突然の手紙、驚かせたら申し訳ない。君の花嫁姿が見たいです。きっとキレイでしょう。トンボかカモメになって飛んで行きたい。もし私が、しばらく帰れなかったとしてもどうか悲しまないでください。いつか必ず、姿を変えてでも君のもとへ帰ると約束します。必ず、必ず。その時は君の煮魚を食べさせてください》

 まるで自分の行く末を予測しているかのような文面だ。彼はこの葉書を出した後、危険な任務を背負い出航したのだろうか。

 ——いつか必ず、姿を変えてでも君のもとへ帰ると約束します。

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