エリート海上自衛官の最上愛
 さっき彼が口にした約束と、ここに書かれている言葉が、ぴったりと重なった。

 震える手で、芽衣は今度は手紙を取り出した。

 宛先は大谷武志、差出人は衣笠みお、日付はみおの晩年だ。住所は書かれておらず、郵送されたものではなく、みおが人生の幕を閉じる直前に書いた武志の葉書への返事のようだった。

《トンボなのかカモメなのか、どのお姿で帰ってこられるのか、おしえてくださったらよかったのに。なにを見てもあなたなのかもしれないと思う毎日でした。でもあなたを想って過ごした日々は幸せでした。生まれ変わっても私はずっとこの場所で、あなたをお待ちしています。必ず帰ってきてください》

 ——ずっとこの場所で、あなたをお待ちしています。

 導かれるようにしてここへ来た、あの不思議な感覚の答えが出た気がした。

 きっと自分は彼と出会うために生まれたのだ。ここへ来ることははじめから決まっていた。

 熱い想いが込み上げる。

 頭の中にみおと武志が出会い、愛を育んだ日々が走馬灯のように蘇る。

 彼女がここで過ごした日々、海を見つめて彼を待っていた幸せな想いが、芽衣の中に確かに存在する。

 ——やっと帰ってきてくれた。おかえりなさい。

 涙に濡れる頬を両手で顔を覆って、芽衣は肩を振るわせる。

「……やっと、会えましたね。おかえりなさい」

 その肩を、晃輝が抱き寄せ、掴んだ手に力を込めた。

「ああ、ずいぶん時間がかかったが帰ってこられたんだ。……今度こそふたりで生きていこう。これからはずっと一緒だ」
 
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